第254回 (旧暦10月16日)
野イバラの実を見つけたら
いま野山を歩くと、紅く熟し始めたノイバラの実に出会います。
ノイバラは、全国の平地から低山帯にかけて分布する野生のバラで、
4月から5月ごろ芳香のある白い五弁花を咲かせ、
花の後、卵形〜長楕円形の実(偽果)を結び、
10月〜11月ごろ紅熟します。
このバラの実の果肉には、
5、6粒で1日の必要量がまかなえるほど
多量のビタミンCが含まれており、
ドイツでは、カゼ(インフルエンザ)の予防や健康飲料として
「バラの実茶」を作って飲む民間療法が
古くから伝承されてきました。
作り方は、カップ1杯の水に小さじ1杯半のバラの熟果を入れて
10分ほど煮立て、火を止めて15分間浸出させてから、
好みで蜂蜜などを加えて飲用します。
また、バラの果実は、ビタミンC以外にも、
フラボノイドのムルチフロリン、
クエルセチンやケンフェノールなどいろいろな成分を含み、
洋の東西を問わず古くから薬用されてきた歴史があります。
漢方では、天日乾燥させた果実を「営実(えいじつ)」と呼び、
腎炎、浮腫、腫瘍、便秘、脚気、リウマチ、生理不順
などに用いますが、利尿作用や瀉下作用が強いため、
1日量2〜5gを300ccの水で煎じ、
2〜3回に分服するのを基本とし、
これ以上の量を用いることを制限しています。
仙人は、この果実をもっぱら果実酒に利用しますが、
冴えた黄色に熟成する「バラの実酒」は、
ほのかな渋みが効いたなかなか個性的なリキュールになります。
作り方は、果実を洗って1日天日に干し、
酒1.8Lに対して果実0.8Lをビンに入れ、
氷砂糖100gを加えてホワイトリカー(35度)を注ぎ、
密封して冷暗所で3か月〜4か月熟成させますが、
中の実を取り出す必要はありません。
なお、日本に自生する野生のバラとして、
海岸性で葉に光沢のあるテリハノバラもありますが、
こちらの実も同じ方法で利用できます。
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ノイバラの実 |
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