第246回 (旧暦10月8日)
「くっつき虫」の知られざる効用
いま、草むらにウッカリ足を踏み入れると、
小さな植物の種子が衣服にくっついて、
それを取り除くのに往生させられることあります。
最近の子供たちは、こうした付着性の植物の種子のことを
「くっつき虫」と呼んでいるようですが、
やはり虫と植物の種子の違いくらいは
子どもうちからはっきりと教えておく必要がありそうです。
仙人も近くの小学校に招かれて
先生たちと植物の話をしたことがあり、
若い先生たちの植物に対する無知さ加減に
いささか驚かされた経験がありますから、
ひょっとすると先生たちも子供と一緒に平気で
「くっつく虫」と呼んでいるのかもしれません。
まあ、それはさておき、今日はそうした付着性種子のひとつである
オナモミの事を取り上げておくことにしましょう。
オナモミというのは、ユーラシア大陸原産のキク科の1年草で、
全国各地の草やぶや路傍に広くはびこっていますから、
下の写真を見れば、ほとんどの人が
「ああ、これのことか」と気が付くはずです。
日本では昔から雑草扱いを受け続け、
全く見向きもされませんでしたが、
中国では、「蒼耳(そうじ)」と呼んで、
古くから畠での栽培が行われてきました。
それは、オナモミの実(蒼耳子)には油が含まれており、
これから食用油を取るためですが、
この蒼耳油というのは、60〜65%をリノール酸が占め、
ベニバナ油とともに動脈硬化の予防には最適の
ヘルシー・オイルなのです。
日本人と比べると油の摂取量が多い中国の人たちに
比較的動脈硬化症が少ないのは、
こうした油を使用していることが
大きな理由のひとつといえるのでしょう。
また、この蒼耳子を、カゼによる頭痛、発熱、発汗などに
1日量8〜10gを400ccの水で煎じ3回に分けて服用するほか、
生葉の絞り汁を虫刺されやあせもに外用する、
などの民間療法もありますから、
この機会に雑草のオナモミを見直してみようではありませんか。
|
オオオナモミの実 |
|