第218回 (旧暦8月26日)
たたけばホコリが出るキノコ
キノコの形といえば、マツタケやエノキタケのように
まっすぐな柄の上に傘を広げている姿を思い描く人が多いはずで、
「キノコ雲」などという忌まわしい言葉も
この形状からの連想です。
しかし、キノコの中には、マイタケやハナビラタケのように
根元から花弁のような形をした柄や傘を広げるものもありますし、
ヒラタケやムキタケのごとくほとんど無柄に近い状態で
木の幹から庇(ひさし)のように半円状の傘を突き出すものなど、
マツタケ型とはまるで異なる姿をしたものがいくらでもあります。
そういえば、梅雨時から秋にかけての季節、
田畑の畦道や草地、林の中の地上などで
白か黄色、または黄褐色の地に細かな黒い点々をたくさん着けた
手足の指くらいの大きさの円いものが
いくつも固まって生えているのを目にしたことはないでしょうか。
実は、これもキノコの一つで「ホコリタケ(埃茸)」といいます。
このキノコは、成長しても傘を開かず、
最後まで円いままの姿を保ち、成熟すると頭頂が破れて穴が開き、
雨粒の衝撃など外側から何か力が加わると、
その穴から煙のように胞子を放出するのですが、
その様がまるで埃を吐き出しているように見えるところから
「ホコリタケ」という名で呼ばれるようになったのです。
おそらく、子供のころに、穴の開いたホコリタケを見つけ、
指先でつついて埃(胞子)を出して遊んだ記憶がある人も
たくさんいるに違いありません。
そこで、今度このホコリタケを見つけたら
穴の開いてない若いやつを抜き取って、
左右に割ってみてください。
このとき、内側の肉が白ければ食用することができますから、
指でつまんで圧してみて、弾力のある若いものだけを選んで
摘み採って持ち帰り、夕餉の食卓に加えてみてはどうでしょうか。
食べ方は、石突きを落としてから熱湯にさっとくぐらせ、
外の皮をぺろりと剥ぐと、パフボールと呼ばれる
白い玉肉がとれますから、これを料理に使うのです。
地面に転がっていたときの姿かたちからは想像もできない
上品な香りを持ち、煮物、鍋物、お吸い物から酢の物、
ピクルス、雑炊なで、いろいろな調理法で楽しめますゾ。
また、穴の開いた老菌から放出される胞子には
血止めの作用がありますから、野外でケガをしたときに
ホコリタケを見つけたら、老菌を摘んで
傷口に胞子を吹きかけてやるとヨロシイ。
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ホコリタケ |
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