第214回 (旧暦8月22日)
そろそろクルミの実が落ちる季節です
つい1週間ほど前に、あるテレビ番組のロケハンに付き合わされて
二子玉川近くの多摩川堤を歩いたところ、
その堤防沿いにオニグルミの木がたくさん自生していることに
気が付きました。
オニグルミは水辺を好んで生える樹木ですから、
多摩川の堤防に生えていること自体は何のフシギもないのですが、
それにしても、二子玉川の近辺に
オニグルミのこんな林が残っていようとは、
さすがの仙人も考え及びませんでした。
しかも、いずれの木々も多きな実をたわわに結び、
ちょっと強めの風にでもゆすられれば
たちまちバラバラと実が降ってきそうな
アンバイではありませんか。
そして、そのオニグルミの林の中を歩いていくと、
途中から細い踏み跡が枝のように何本も岐れていて、
それぞれの踏み跡の奥には判で押したように
ホームレスの人たちの佗住まいが佇んでいるのです。
仙人はそのことに気が付くと、
ここに寓居する人たちはオニグルミのことをよく知っていて、
その野の倖の恩恵に人知れず浴しているのではないだろうか、
と思ったものです。
それというのも、このオニグルミは、高カロリー、高栄養の
すぐれた天然ナッツで、縄文以来、粉の日本列島の住人の生命を
陰ながら支えてきた歴史があるからでした。
また、オニグルミは、種子を食用するだけでなく、
漢方では「胡桃仁(ことうじん)」と呼んで
滋養強壮や咳止めなどの薬として用いますし、
ヨーロッパでも、クルミの葉は血液を浄化する薬とされていて、
内臓疾患に伴う湿疹や発疹などに乾燥させた葉を煎じた
「クルミ葉ティー」を常用する自然療法が伝えられています。
仙人の場合は、もっぱらホワイトリカーに漬け込んで
クルミ酒にしますが、この酒はカゼによる発熱、咳止め、
のどの痛み、気管支炎などにヨロシイ。
クルミ酒の作り方は、ホワイトリカー1.8Lに対して
堅果(殻付きの種子)0.6Lをびんに入れ、
氷砂糖100gを加えて密封し、冷暗所で3ヶ月間寝かせます。
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自生種のオニグルミ |
栽培種のテウチグルミ |
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