蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第212回 (旧暦8月20日)
キノコは物質循環の還元者

キノコはカビのなかまで、生物学的には
「菌類」と呼ばれるグループに属することは前に述べた通りです。
「カビ」とか「菌」とかという言葉を聞くと、
反射的に何か人間にとって害毒を与える
「悪者」のようなイメージを抱く人も少なくないようですが、
それは単なる偏見というものですから、
この機会に改めてもらわなければなりません。

人類は、長い間「菌類」を植物のなかまと捉え、
地球上の生物は植物と動物とによって
構成されていると考えてきましたが、
現在では、菌類を独立した生物群と認識し、
植物、動物、菌類の三者が物質の循環に携わることによって
生態系が保たれている、と考えるようになってきたのです。

物質循環という視点で生物を見ると、
まず、植物は光合成によって無機物から有機物を合成し、
それを消費して自らが生長すると共に、
この一部を体内に蓄積します。
これに対して、植物のように
自分で有機物を作ることができない動物は、
植物を食べることによってそれを摂取し、
生存のためにエネルギーとして利用しているのです。

そのため、物質循環の図式では、植物は生産者、
動物は消費者という位置付けがなされています。
ところが生産者である植物も、消費者である動物も、
やがては死を迎え、その遺骸を
大地に横たえることになってきます。
その時、大地に横たわった植物や動物の遺骸という有機物を
分解して再び無機物として
還元するはたらきをする者がいなければ、
物質循環の環は途切れてしまうことになるでしょう。

ちなみに、植物が地球上に姿を表わして以来、
それこそ数えきれない量の動植物の遺骸が発生したはずですが、
もしこれらを分解して
無機物として還元する者がいなかったとしたら、
われわれが住む地球はこれらの遺骸によって
とっくに埋め尽くされていたはずです。
実はこうした動植物の遺骸などを分解して
無機物として再び大地に還元する働きをしているのが菌類であり、
したがって、菌類は物質循環の図式では「還元者」に位置します。
つまり、こうした菌類の仲間のひとつであるキノコも、
このようなはたらきをしている生物ということになるわけですナ。

キノコは物質循環の還元者

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