第210回 (旧暦8月18日)
イガを捨ててはモッタイナイ
鎌倉でもクリの実が口を開け始め、
青果店の店先にはひと足早い栽培グリが
並ぶ季節になってきました。
そこで今日は、クリの話でもしておくことにしましょうか。
クリとえいば、平成4年に始まった
三内丸山遺跡(青森県)の発掘で、
直径1mに及ぶクリの巨木を利用した
掘立柱建物の存在が明らかになったり、
土中から大量のクリの花粉が出土したりしたことによって、
三内丸山の縄文人たちは
クリの実を主食にしていたのではないか、
という説が有力視されるところとなりました。
もちろん、三内丸山にかかわらず、
縄文人たちがクリやクルミ、ドングリなどの
堅果類を主要な食糧としていたことは
衆知の事実と言えるのですが、
とりわけ、アクがなくて生食できるうえ、
保存性にすぐれ、かつ栽培化も容易なクリは、
彼らにとってまことにアリガタイ食べ物であったに
相違いありません。
ところで、クリという植物は、
実を食べるだけでなく、
樹皮も葉も、あのとげとげのイガも、
すべてクスリとして利用できるということを
ミナサンは知っていたでしょうか。
実は、クリの樹皮や葉、果皮などには
タンニンやクエルセチンが多量に含まれており、
中国では、果実を「栗子(りっし)」、
葉を「栗葉(りつよう)」、
樹皮を「栗樹皮(りつじゅひ)」と呼んで、
古くから健胃、止血、るいれきなどのクスリとして
用いられてきたのです。
一方、日本でも、ウルシかぶれや湿疹、火傷などに、
樹皮や葉、イガを煎じた汁(冷ましてから使用)を塗布したり、
咳止めやのどの痛みにイガの煎じ汁を飲用したり、
慢性の腎臓病に実の茹で汁を飲んだりするほか、
下痢止めとして花穂の煎液を服用する、
などの療法が民間で広く行われてきました。
仙人も、自転車で転んで大きなすり傷を作った折、
葉とイガを煎じた液を加えた湯で
入浴した経験がありますが、
傷口がすぐ固まって治りが早かったのを覚えています。
また、実のまわりについている渋皮を乾燥して粉にし、
これを蜂蜜に混ぜてパックをすると
顔のシワがとれるとも聴きますから、
シワが気になる人は一度試してみたらどうでしょうか。
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クリ |
クリの茶巾絞りで野点を楽しむ |
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