第209回 (旧暦8月17日)
ジュズダマとソックリさん
小川のふちなど、水辺を歩いていると、
特徴のある果実をつけたジュズダマの姿を
目にする季節になりました。
このジュズダマを見ると、幼い頃、
これの実に糸を通して首飾りや腕輪などを作って遊んだことを
懐かしく思い出す人がたくさんいるのではないでしょうか。
このジュズダマは、熱帯アジア原産の稲科の多年草で、
トウムギ(唐麦)とも呼ばれ、子供たちの遊び道具だけではなく、
実は、身近な薬草として利用されてきた歴史があります。
民間では、イボとりにたたき潰した実を煎じて服用したり、
生理不順に根の煎汁を飲用したりするのが代表的な用例ですが、
漢方では、果実を「川穀(せんこく)」、
根を「川穀根(せんこくこん)」と呼び、
主としてリウマチや神経痛などの鎮痛薬として用いられます。
ところで、このジュズダマと姿かたちがソックリで
外見ではほとんど見分けができない薬草が
もうひとつあることを知っているでしょうか。
それは、市販の健康茶などにも多用されているハトムギですが、
こちらのほうは、やはり熱帯アジア原産のイネ科ながら1年草で、
もっぱら薬草として畑で栽培されています。
両者の違いは、ジュズダマの場合は花序が上向きにつくのに対し、
ハトムギでは下向きに垂れることと、
ジュズダマの果実はホウロウ質で硬いのに対し、
ハトムギの実は指で強く押すと潰せるほど軟らかなこと、
また、実を噛んだとき、
ジュズダマはウルチ性で歯にくっつかないのに対し、
ハトムギの実はモチ性で歯にまとわりつくことくらいで、
外見から両者を判別することは容易ではありません。
薬草としての位置付けは、ハトムギのほうが本家にあたり、
どうやらジュズダマはハトムギの代用品として
使われてきたものと思われます。
ちなみに、ハトムギのほうは、
果実を精白したものを「仁(よくいにん)」、
根を「根(よくいこん)」と呼び、
漢方では果実は鎮痛、利尿、消炎、強壮、脚気などに、
根は強壮、利尿ほか黄疸や水腫、駆虫などに用いられていますが、
民間でも仁20〜30g(1日量))を600cc程度の水で煎じ、
ハトムギ茶として美肌作りやイボとリ、
高血圧の予防などに用いる療法があります。
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ジュズダマ |
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