蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第196回 (旧暦8月4日)
ツチアケビを見つけたら……

明日から9月。これからキノコのシーズンを迎えますが、
キノコ採りで林の中を歩いているようなとき、
バナナのような形をした真っ赤な実を数個ずつぶら下げて
直立している奇妙な植物に出会ったことはないでしょうか。

これは、産地の湿り気のある林内に生えるツチアケビと呼ぶ
ラン科の腐生植物で、その姿かたちから「ヤマトウガラシ」とか
「キツネノシャクジョウ」「ヤマサンゴ」などと
呼ぶ地域もあります。
ツチアケビの仲間(ラン科ツチアケビ属)は、
そのほとんどが熱帯から亜熱帯にかけての地域に分布しますが、
日本固有のこのツチアケビ1種だけが温帯に分布し、
その意味でも珍しい植物と呼ぶことができるのでしょう。

さて、ツチアケビは中国に産しないために
漢薬には含まれていませんが、
和薬では「土通草(どつうそう)」と呼ばれ、
古くから強壮強制や性病(淋病)の薬として
利用されてきた歴史があります。
実のところ、ツチアケビの成分はまだ十分に精査されておらず、
学者のなかにも「強壮強精に良いというのは、
実の形が男根を連想させるためで、その実効性は疑わしい」と
する説もありますが、近年、
未詳の配糖体やペクチンなどが含まれていることが
判ってきましたから、先人たちが経験的に伝承してきた効用は、
どうやら単なる妄想や願望だけではなかったことになりそうです。

民間での用法は、秋に熟した果実を天日でカラリと乾燥させ、
強壮強精や淋病治療の利尿には1日量10gを200ccの水で
半量に煎じて服用するほか、
かぶれや湿疹に同上の煎じ汁で患部を洗う、
などの療法がありますが、
仙人の場合には、熟果を4〜5日天日に当てて半干ししたものを
ホワイトリカーに漬け込んで薬酒と作り、
ときどきチビチビと飲っています。

また、このツチアケビという植物は、
ナラタケの菌糸と共生する習慣がありますから、
キノコ採りの途次にこれを見つけたら、
必ずその周囲に眼を這わせてみることです。
そうするとナラタケの思わぬ大群に出会えることもありますゾ。

ツチアケビ

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