蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第194回 (旧暦8月2日)
寺や神社の社を見直してみませんか

自然環境に対する意識の高揚もあって、
森や林のことがマスコミに取り上げられる機会が増えています。
しかし、そうした折に、ブナ林やヒノキ林、
また雑木林や里山林についてはひんぱんにその対象とされますが、
日本の自然風土の中で特殊な環境を構成する
「寺社林」について触れられることはほとんどありません。

たしかに、寺社の場合には宗教的な問題があって
取り上げにくいのかもしれませんが、
実は、日本の植生について語るとき、
この寺社林を避けて通ることはできないように仙人は思います。

それは、自然植生として全国で16か所の社叢林(しゃそうりん)が
天然記念物の指定を受けているほか、
瀬戸内海に浮ぶ大三島の大山祇神社のクスノキ郡や
奈良県春日神社境内のナギ樹林、
また静岡県伊古奈比当ス神社のアオギリ自生地など、
貴重な植物群生地として
天然記念物の指定を受けている神社の林が少なくありませんし、
自生植生以外にも、天然記念物に指定されている樹木を見ると、
イチョウ科では29件のうち14件が、スギ科では49件のうち16件が、
そしてクスノキ科では31件のうち9件が、
それぞれ寺社の境内に位置していたりするからにほかなりません。

また、里山林が人々の生活や暮らしと密着した林であるのに対し、
寺社林とりわけ神社の杜は(もり)は
日本人の精神文化と深いかかわりを持っており、
その意味でも現在に残された貴重な自然遺産と言えるのです。

ちなみに、鎌倉の鶴岡八幡宮の場合を例にとると、
背後の社叢林は三浦半島の山々と同じようにシイやカシが有占し、
低木層にはヤツデやアオキなどが、
そして低層にはイノデなどのシダ植物が生える
典型的な照葉樹林の植生を呈していますが、境内に目を移すと、
有名な大イチョウやビャクシン(イブキ)などの
県指定文化財とされる巨木のほか、
キササゲやナギなど鎌倉地方の自然植生では見られない
いろいろな樹木が植えられていることに気がつきます。

これら境内で見られる樹木は、
かつて神官たちの手によって植えられたものですが、
ひとわたり見渡してみると、
ナゼカ薬効を持つ樹木が多いことに気付くのです。

おそらくこれは、代々の神官たちが
そうした意図を持って植栽したのに違いありません。
このように、神社や寺に行ったとき、
そこに植えられている植物を眺めてみると、
これまで気付かなかった新しい発見がありますから、
ときにはこんな眼で寺や神社を見てみることすすめます。

キササゲ

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