第172回 (旧暦7月1日)
海水浴のついでに探してみませんか
昨日、三浦半島の相模湾に面した砂浜で
ハマボウフウの小さな群れを目にしました。
海岸というフィールドは、海水の波しぶきを被ったり、
塩分を含んだ強い風に吹かれたり、また、強烈な直射日光と、
それに伴う強い軸射熱などに絶えずさらされていて、
植物の生育にとっては
極めて厳しい環境といわなければなりません。
そのため、海辺に生える植物は、
長い根を地中に伸ばしてからだを安定させたり、
多肉質・多汁質の葉や、表面に光沢のある葉などを身につけて
乾燥から身を守る、などの工夫をしているのです。
ハマボウフウは海岸に生えるセリ科の多年草ですが、
やはり海浜植物の特徴のひとつである
長い根茎と光沢のある厚めの葉っぱを持っています。
若い葉には特有の臭気があり、
刺身のツマや正月の雑煮の取り合わせなどに用いるため、
野摘みのものが八百屋の店先にも並べられるところから
「八百屋防風」と呼ぶ地域もありますが、
和名の由来は「浜に生える防風」の意。
ちなみに「防風」というの葉、中国に産するセリ科の薬草で、
日本ではこのハマボウフウをその代用として利用してきたのです。
薬用に用いるのは根茎ですが、これを陰干し乾燥させたものを
漢方では「浜防風」または「北沙参(ほくしゃじん)」と呼び、
解熱、鎮咳、去痰などの風邪症状や強壮に用います。
仙人は、この根を2〜3cmの長さに裁断して
2、3日天日で半干ししたものをホワイトリカーに漬けて
(酒1.8Lに対し1L、氷砂糖100g)薬酒にしたり、
乾燥根を煮出した液を浴湯に加えて
「ハマボウフウ湯」を楽しんだりしていますが、
薬酒・薬湯とも、発汗作用に優れ、
引き初めのカゼならばこれだけで熱も下がり、
すぐに治ってしまいますゾ。
ハマボウフウの根にはパナキシノールなどが含まれ、
動物実験でも解熱や鎮痛の作用があることが解っていますから、
機会があればぜひ試してみるとヨロシイ。
夏休みに海へ出かける予定がある人は、
ただ泳ぐだけでなく、こういうものも探してくることですナ。
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海辺に生えるハマボウフウ |
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