蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第169回 (旧暦6月27日)
ホオズキも薬草ですゾ

いま花屋の店先を通るとホオズキの鉢植えが並んでいます。
ホオズキの「ホオ」とはカメムシのことで、
「カメムシが好きな草」という意味ですが、
古くは「加賀智(かがち)」
「如加都岐(ぬかつき)」などと呼ばれていました。

つまり、『古事記』に登場する須佐之男(スサノオ)伝説で、
八岐大蛇(やまたのおろち)が
赤加賀智のごとき目玉をしていたとあるのは、
赤く熟れたホオズキのような目玉だった、ということです。
また、漢字では「鬼灯」とも表記するように、
日本人はホオズキに対してなぜか
「オドロオドロシイ」イメージを抱いてきたようですが、
中国では一転して「可愛らしい」イメージで受け取られ、
「花姑娘」「紅姑娘」などと呼ばれています。

そのせいかどうか、ホオズキの利用法においても
日本と中国では大きな違いがあり、
日本では、ホオズキの根に子宮興奮と緊縮作用があるところから
密かに「堕胎薬」として利用されてきた歴史があって、
暗いイメージがついてまわるのです。
これに対して中国では、全草を「酸漿(さんしょう)」、
根や根茎を「酸漿根(さんしょうこん)」と呼び、
解熱、咳止め、利尿、黄疸などの薬として利用されてきました。

薬理実験によれば、ホオズキには、子宮興奮作用のほかにも、
解熱、強心、抗菌などの作用があることが解っていますから、
暗いイメージだけにとらわれず、
本来はもっと活用されてもよい薬草のひとつといえるでしょう。

なお、日本でホオズキの明るい利用法といえば、
熟した実の種子を取り出し、
口の中でキュッキュッと鳴らす子供の遊びがありますが、
実は、この熟果は生のままや煮て食べられるほか、
葉も塩ひとつまみ加えた熱湯で茹でてから、
おひたしなどで食用にできます。

ちなみに仙人は、このホオズキの実を姿のまま炭に焼き
(これを花炭または飾り炭といいます)、
装飾と防臭を兼ねてトイレの壁に飾っておりますゾ。

ホオズキの実で作ったタコ

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