第162回 (旧暦6月20日)
もし、マムシに出会ったら……
夏休みも近くなり、アウトドアへ出掛ける計画をたてている人も
少なくないと思います。
そこで今日は、夏のアウトドアで注意したい
毒のある動物について書いておくことにしましょう。
もっとも、毒のある動物とは言っても、
われわれが住む日本列島は、
豊かな自然に恵まれているわりには有毒生物は比較的少なく、
かつ、致死性の強い毒を持つ陸生動物となると、
毒蛇のハブ、マムシ。ヤマカガシと
スズメバチのなかまくらいですから、
必要以上に怖がる必要はありません。
しかも、このうちもっとも危険なハブは
奄美列島以南にしか分布せず、
ヤマカガシの場合は毒牙が口の奥にあり
指でも突っ込まないかぎり咬まれることはありませんし、
また、スズメバチの被害は夏よりも秋口以降に集中するため、
今回は、ちょうど夏休みの時期に当たる7〜8月に咬傷事故が多い
マムシに絞って話を進めることにしておきましょう。
さて、マムシに咬まれる事故は
夏休みの時期に多いと書きましたが、
それはこういう理由によるものです。
つまり、マムシという蛇は、ふだんは山林の沢筋や田畑などの
水に近いところを好んで棲むものの、
秋に出産するメスの場合は、7〜8月の昼間、
胎児の発育を良くするために
日なたに出て日光浴をする機会が増えて、
結果的にマムシに咬まれる事故も
この時期に集中するというわけですナ。
しかし、見掛けによらずマムシは比較的オトナシイ蛇で、
不用意に近付いたりしない限りまず咬まれることはありませんし、
万一咬まれた場合でも、咬傷によって注入される毒の量は少なく、
血清治療が進歩した現在ではよほど手当てが遅れない限り
死亡することはめったにありません。
ちなみに、最近30年のマムシによる死亡事故は、
10年間で1.5人程度であり、
スズメバチによるそれが年間40人近いことと較べると、
スズメバチのほうが何倍も恐ろしいと
いわなければならないでしょう。
ただし、もし咬まれたときは、巷間いわれるように
傷口に口を当てて毒を吸い出すのはかえって危険で、
傷口と心臓の中間部を幅の広い布で縛り
(10分ごとに2〜3分間ずつゆるめ、これを繰り返す)、
少しでも早く血清治療を受けるようにすることです。
なお、(財)日本蛇族学術研究所(群馬県新田郡藪塚町)では、
7月26日と8月9日に「マムシ対策研修講座」を開催しますから、
興味のある人は下記宛てに問い合わせてみるとヨロシイ。
日本蛇族学術研究所マムシ対策講座係
電話:0277-78-5193
メール:snake-c@sumfield.ne.jp
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