第156回 (旧暦6月14日)
オオバコは食薬兼用のスグレモノの野草です。
いまは少なくなったかもしれませんが、
地道の農道などで車の轍(わだち)に沿って
オオバコがびっしりと生えているのを
目にしたことはないでしょうか。
これは、昔馬車や牛車がその道を通るたびに
馬や牛の足にオオバコの種子がくっついて
道沿いに運ばれたからで、車の轍に沿って群生するその光景から、
漢名ではオオバコのことを車前草(しゃぜんそう)といいます。
つまり、オオバコの種子は、水を含むと粘りが出て、
その粘液で動物の身体や人間の衣服にくっつき、
乾いてくると自然に脱落してそこで繁殖する、
という仕組みですが、
本来は平地植物であるオオバコが現在では
標高の高い高原にまで繁茂しているのも、
こうして種子が運ばれたことによるのです。
このように繁殖力が旺盛で、どこにでもはびこっているため、
一般には雑草扱いを受けているのが実情ですが、
実は、見掛けによらず食薬兼用のすぐれた野草ですから、
この機会に見直してみてはどうでしょうか。
オオバコの葉には、イリドイド配糖体のオウクビンや
フラボノイドのプランタギニンなどが、
そして種子には粘液多糖類が多量に含まれており、
漢方では利尿や消炎の薬として利用され、
主として膀胱炎、咳止め、去痰、目の充血などに用いられます。
また、民間では、胃弱や淋病、
眼病などに葉と種子を煎服したり、
高血圧、ゼンソク、関節炎、蓄膿症、声がれ、疝痛などに
オオバコ茶を飲用したりするほか、
火で焙った生薬をハレモノに貼ったり、
歯痛の折に塩もみした生薬を噛みしめる、
などの療法が行われています。
一方、食用としては、若葉を塩ひとつまみ加えた熱湯で茹でて
冷水にとり、水を絞ったものを和え物やひたし物、
炒め物などにしますが、
もちろん生葉をそのままテンプラにしてもヨロシイ。
なお、オオバコの仲間には、ムラサキオオバコ、
チャボオオバコ、ヤグラオオバコ、トウオオバコなど
いろいろな種類がありますが、いずれも同じ方法で利用できます。
|
|
オオバコ |
オオバコのおひたし |
|