蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第151回 (旧暦6月9日)
仙人流歯磨き術

もうだいぶ前のことですが、
アフリカに関するテレビ番組を見ていたとき、
現地の人たちがある樹木の枝先をササラ状にして、
それで歯を磨いている光景を目にした記憶があります。

実をいうと、仙人には、何日間か山に入るようなとき、
歯磨き剤や歯ブラシというものを持って出る習慣が
現在でもありません。
その理由の一つには、若い自分に山登りに熱を上げていて、
当時は、山に行って貴重な水を毎朝歯磨きに使用することなど
トンデモナイという風潮があり、その習慣がいつの間にか
身に付いてしまったことがあるのでしょう。
では、今でも山へ行くときは歯を全く磨かないかといえば、
草ではなく、山に生えている樹皮の枝先を切り採り、
いつかテレビで見たアフリカの人たちを同じように、
その枝先で歯を磨いているのです。

仙人が歯磨きに使用するその樹木はクロモジといいますが、
このクロモジはクスノキ科の落葉小高木で、
別名「ヨウジの木」と呼ばれるように、
古くから爪楊枝の材料として利用されてきた歴史があり、
いまでも料理屋などで爪楊枝のことを「くろもじ」と呼ぶのは、
そのためにほかなりません。
古来、クロモジの枝が爪楊枝として利用されてきたのは、
材にリナロール、ゲラニオール、シネオールなどの
精油成分を含んでいて、ここちよい芳香があるからですが、
実はもうひとつ、このクロモジの楊子で歯をほじくっていると
虫歯になりにくいという理由があったのです。

漢方では、クロモジの樹皮を乾燥させたものを
「釣樟(ちょうしょう)」という生薬名で呼び、
止血や急性の胃腸炎などに用いますから
まだ精査はされていないものの、
おそらくクロモジにはある種の制菌作用があるのに
ちがいありません。

また、枝葉から蒸留抽出した精油(クロモジ油)は、
昔からセッケンの芳香剤として用いられるほか、
この精油で頭をマッサージすると、抜け毛やフケがおさまり、
ハゲの予防に効果がありますし、
うち身や捻挫、リウマチなどに患部を湿布すると
痛みをやわらげる効用もあります。

ちなみに仙人は、山での歯磨き以外にも、
枝材をホワイトリカーに漬けてクロモジ酒を作ったり。
枝葉を乾燥してクロモジ茶などにも利用しておりますゾ。

クロモジの木

クロモジで作った楊子

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