第138回 (旧暦5月26日)
10種類の薬効を持つ「薬草のチャンピオン」
いま、どこを歩いてもドクダミの花盛り。
ドクダミ茶を作るなら今が採りどきです。
ドクダミは、本州、四国、九州に分布するドクダミ科の多年草で、
平地から山地までのやや湿り気のある
荒れ地や路傍、人家周辺の空き地などに群生します。
全草にドクダミ臭と呼ぶ特有の強い臭気があり、
中国では「魚醒草(ぎょせいそう)
=なまぐさい魚のような匂いのする草」と呼ばれてきましたが、
この臭気の素はデカノイドアルデヒドという物質で、
実は、強い制菌作用や消臭作用を持っています。
昔から、ドクダミの生葉を吹き出物や蓄膿症、梅毒、ニキビ、
アセモ、火傷、凍傷などの皮ふ疾患や
化膿症に用いてきたのはこのためですが、
おもしろいことに、肉や魚の料理にこの強い臭気を持つ
ドクダミの生葉を加えると、
肉や魚のなまぐさい匂いを消す効果がありますし、
冷蔵庫に4〜5枚の生葉を入れておくと、
食品の鮮度を長持ちさせるとともに、
消臭剤の役割りも果たしてくれますから、
「えっ、ウッソ〜」などという前に
一度試してみるとヨロシイ
(もちろん、肉や魚、冷蔵庫内の食品に
ドクダミの匂いは移りません)。
ところが、フシギなことに、
このデカノイドアルデヒドが含まれているのは生葉のときだけで、
乾燥するとメチル・ノニルケトンという物質に変化して、
あの特有の臭気も制菌力も失われてしまうのです。
乾燥させたドクダミ茶に
あのドクダミ臭がないのはそのためですが、
それでは、乾燥したドクダミには大した効用はないかといえば、
これがまた、生葉のときとはまったく別の
さまざまな効果を発揮します。
たとえば、乾燥葉に多く含まれるクエルチトリンや
イソクエルチトリンには、毛細血管の老化を防止したり
強化したりするはたらきがあって、
血液を浄化し、動脈硬化や脳梗塞の防止などに
すぐれた効果をもたらしますし、
もともとドクダミにはカリウムやマグネシウムなどのミネラルが
多量に含まれており、これが高血圧の抑制や予防に役立つのです。
つまり、ドクダミという薬草は、
生葉のときと乾燥したときとではそれぞれ別の効用があり、
その両方を合わせると
実に多様な効能も持っているということですが、
だからこそ「10種類の薬効がある」という意味で
「十薬(じゅうやく)」と呼ばれたり、
イシャイラズ、イシャゴロシなどという異名を
戴いてきたのにちがいありません。
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ドクダミ |
ドクダミの葉を料理に使ってみよう |
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