第121回 (旧暦5月9日)
玄米は、発芽すると軟らかくなります
これまで何回かにわたって、
発芽することで起こる生理的変化と、
その効用について述べてきましたが、
発芽に伴う変化には、これとは別に、
もうひとつ物理的な変化があります。
物理的変化というのは、
そのものが持っている物理的特性の変化ということで、
コメの場合に見られるイチバンの変化は
「軟らかくなる」ということでしょうか。
それでは、発芽をするとナゼ軟らかくなるのかといえば、
まず第一の原因は、発芽に伴って水分値が高くなるからです。
通常、玄米を人工的に発芽させるときは、
27〜30度Cの水に24時間程度浸漬させますが、
この状態でハト胸状に発芽した玄米の重量比含水量は
約30%程度になっています。
これに対して、発芽させる前の玄米のそれは15.5%ですから、
発芽した玄米では約2倍の水分が含まれていることになります。
水分値が高くなれば、
それだけ軟らかくなるのは当然のことですし、
また、発芽するということは、
外皮層の一部が裂開して芽が出ることになるわけですから、
水分を含む胚乳部だけでなく、
外皮層(糠層)全体も軟化していなければいけません。
それでは、発芽によって軟らかくなるといっても、
具体的にどの程度軟らかくなるのか、というと、
「白米とおなじ程度の軟らかさ」になるのです。
ということは、白米とおなじ方法で
炊くことができるということになりますから、
ふつうの玄米のように前の晩から水に漬け込んだり、
ビタミンB1を破壊する圧力釜を使ったりする必要も
なくなるということにほかなりません。
また、通常、白米飯の消化吸収率は約98%、
玄米飯のそれは約90%とされていますから、
発芽した玄米の場合には、玄米以上の高栄養を
白米飯とおなじ程度の高率で消化吸収できることになるでしょう。
となると、発芽した玄米は、
生理的な変化によってとともに、物理的な変化によっても
さらに消化吸収効率が向上するというわけです。
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