第119回 (旧暦5月7日)
発芽によってコメの栄養分が増加するナゾ
今日はまたコメの話に戻ります。
先回までに、発芽をするとコメに含まれている
でんぷんやタンパク質、脂肪、ミネラルなどの
消化吸収効率が格段に向上することと、
それは発芽に伴ってコメに蓄えられていたこれらの成分が
母乳化するためだ、ということを書いてきました。
それでは、コメに含まれる栄養素のうち、
もうひとつ残っているビタミンには
何の変化も見られないのでしょうか?
実は、ビタミンの場合には、発芽をすることによって、
その数値が増大するのです。
コメ(玄米)に含まれるビタミンには、
B1、B2、ナイアシン、B6、Eなどがありますが、
このうちB1とナイアシンは顕著に、B2とEは微量ずつ、
それぞれ増加することが確認されていますし、
またビタミン以外にも、タンパク質で約3%、
カルシウムでは20%以上も増加することが判ってきました。
発芽によって、
ナゼこのような栄養活性が起こるのかということは、
学問的にもまだ十分な検証が行われておりませんが、
おそらくそれは、次のような理由によるのに違いない、
と仙人は考えているのです。
コメが発芽するために必要な栄養分は
最初から種子内に貯蔵されており、
これに水と温度と酸素の条件が整って
発芽が開始されるわけですが、
実は、最初から貯蔵されていた栄養分は、
発芽して第3葉が開出するころまでに
すっかり使い果たされてしまいます。
一方、発芽した後、
それが新しい生命体として生存していくためには、
大地にしっかりと根を下ろして葉を広げ、
独立栄養生活を始めなければなりません。
しかし、最初から種子内に蓄えられている栄養分は、
そこまでもってギリギリの状態ですから、
気象の異変など、何かちょっとしたトラブルでもあれば、
独立栄養生活に移る前に枯渇して、
たちまち燃料切れを起してしまうことになりかねません。
そこで、種子は、発芽が開始されると同時に、
そうしたときのための補充用・予備用の栄養分を
急いで用意する―というわけです。
つまり、発芽によって増加した栄養分は、
こうして捻出された補充用・予備用の分だということですが、
読者のみなさんはどう思われますか?
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