第114回 (旧暦5月2日)
6月の野山は木の実の宝庫
早いもので、今年ももう6月を迎えました。
6月といえば、梅雨を連想するせいでしょうか、
何となく野山から足が遠のく傾向が見られますが、
実は、6月の野山というのは意外に収穫物が多い時期なので、
おっくうがらずに野に出ることをおすすめします。
それというのも、この6月という月は、
草木の実がいっせいに実る時節で、
薬酒や果実酒、ジャムなどを作るのに
もっとも適しているからです。
木の実の季節といえば、
秋のものだと思い込んでいる人が多いかもしれませんが、
秋に実るのは夏に花を咲かせるものがほとんどで、
春に花をつける植物は、おおむね初夏に実が熟すもの。
果実酒の代表格であるウメはもちろんのこと、
ビワ、グミ、ヤマモモ、ユスラウメなどの庭木をはじめ、
サクラ(ソメイソシノ、ヤマザクラなど)もコウゾもヤマグワも、
みなこの季節に実ります。
そこで今日は、ちょうど今が熟れ盛りの
木イチゴを紹介しておくことにしましょう。
いま、湘南地方の海辺を歩くと、海沿いのヤブに、
橙黄色に熟した親指の頭くらいの大きさの実が
たわわに実っているのを見かけますが、
これは木イチゴの一種でカジイチゴといいます。
日本在来の木イチゴで実が橙黄色に熟すものには、
もうひとつモミジイチゴがあり、姿かたちもそっくりながら、
モミジイチゴの枝にはトゲがあるのに対し、
カジイチゴにはトゲがないことと、
モミジイチゴが内陸性であるのに対し、
カジイチゴは海岸部を好んで生えることなどで区別できます。
さて、このカジイチゴの実には、
ビタミンC、カロチン、リンゴ酸、
ペクチン、果糖などが含まれており、
そのまま食べても甘ずっぱくてなかなかウマイものですが、
仙人は、毎年これで果実酒を作っています。
作り方は、ホワイトリカー1.8Lに対し、
熟果0.9L、氷砂糖100gを加えて漬け込み、
冷暗所で3〜4か月寝かせると(果実は10日で取り出す)、
熟果のようなきれいな橙黄色に熟成します。
このカジイチゴ酒は、やわらかな呑み口で、
冷え性、貧血、美容などに効用がありますから、
御婦人方によろこばれますゾ。
|
海辺に生えるカジイチゴ |
|