第113回 (旧暦5月1日)
発芽によって「でんぷん」はブドウ糖になる
今日はまたコメの話に戻りましょう。
この前は、玄米を発芽させると
ミネラルとフィチンとの結合が解消され、
玄米中に含まれるミネラルが
まるまる消化吸収されるようになる、ということを述べました。
そこで今回は、発芽によって生じるもうひとつ別の生理的変化と、
その効用について書いておくことにしたいと思います。
先回でも指摘したように、コメはイネという植物の種子で、
新しい世代の生命を誕生させるための
栄養貯蔵庫の役割りを果たしています。
ということは、玄米中に71.8%含まれている糖質(でんぷん)も、
コメが新しい芽を出すために必要な栄養素として
蓄えられていることになるわけですが、
それでは、コメは、新しい芽を出すにあたって、
この糖質(でんぷん)を
どのようにエネルギー化しているのでしょうか?
実は、発芽の準備が整うと、胚にある上皮層という組織から
アルファミラーゼなどの糖化酵素が分泌され、
この糖化酵素によって胚乳に蓄えられているでんぷんは乳化し、
グルコース(ブドウ糖)などの
水溶性単糖類に分解されて胚に吸引され、
胚の中で最終的にはしょ糖(シュクロース)に変えられて
生長のエネルギー源として消費されているのです。
つまり、簡単にいえば、胚乳に貯蔵されているでんぷんは、
発芽が始まるとブドウ糖に分解されて
胚に送られるというわけです。
そうすると、われわれが発芽した玄米を食べたときは、
そこに含まれている糖質は多糖類の「でんぷん」ではなく、
最初から単糖類の「ブドウ糖」のかたちになっていて、
その状態で摂取することになるでしょう。
ということは、通常のコメの場合には
まず「でんぷん」の状態で摂取し、
それを体内で「ブドウ糖」に分解してから
初めて消化吸収しているのに対し、
発芽させたコメの場合だと、
最初から「ブドウ糖」の状態で摂取できることになりますから、
体内で「ブドウ糖化する」という工程を省略して消化吸収し、
ただちにエネルギー化できる、ということにほかなりません。
コメ(玄米)は、71.8%をでんぷんが占めている食品ですが、
その主要栄養素であるでんぷんが
このようなかたちで摂取できるということは
スゴイことだと思いませんか?
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玄米では、芽が出た後に根が出てくる |
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