蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第89回 (旧暦4月7日)
山でうまいは……

「山でうまいはオケラにトトキ、嫁にやるのは惜しござる」
もしかして、こんな俗謡を耳にしたことはないでしょうか。
つまり「うまい山菜といえばオケラとトトキにつきる。
嫁に食べさせるのは惜しいほどだ」というわけです。

ここに謡われているオケラというのは、キク科の多年草で、
毎年、大晦日(おおみそか)に京都・八坂神社で焚かれる
「おけら火」はこれの根を燃やしたものですし、
元日に呑む屠蘇(とそ)の中にも
この根の粉末が含まれていますから、
姿を知らない人にも案外身近な植物をいえるのかもしれません。
そして、もうひとつのトトキのほうは、キキョウ科の多年草で、
正式和名ではツリガネニンジンといいます。
両者とも、先の俗謡のごとく、ちょうど今ごろ採れる若苗は
和え物、おひたし、テンプラなどで食用されますが、
実は、ともに古くから重用されてきた薬草でもあるのです。

オケラもツリガネニンジンも、
薬用には秋に掘った根を乾燥させて用い、
漢方の生薬では、オケラのほうは白朮(びゃくじゅつ)、
ツリガネニンジンのほうを沙参(しゃじん)と呼びます。
オケラの根にはアトラクチロンを主成分とする精油が含まれ、
健胃や利尿に効用があるところから、
漢方では「四君子湯」「五苓散」「越婢加朮湯」など、
いろいろな処法に用いられるほか、
風邪の初期症状や頭痛に乾燥根を煎服する民間療法もあります。

一方、ツリガネニンジンの根はサポニン類を含み、
健胃や去痰・せき止めなどに用いますが、
民間療法では肺結核や肺気腫などに用いたこともあったようです。
また、両種とも根をホワイトリカーに漬けて薬酒を作り
(酒1.8Lに対し0.9L、氷砂糖100g)
健胃整腸や疲労回復に手軽に利用することもできますから、
機会があればドウゾ。
なお、オケラもトトキも、山菜として食べてみると、
決して「嫁にやるのも惜しい」ほどウマイわけではアリマセン。
念のため……

ツリガネニンジンの若苗

←前回記事へ 2003年5月7日(水) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ