第86回 (旧暦3月26日)
和漢伝統の薬木ウコギの効用
昨日は杏仁子のことを書きましたから、
今日もひきつづき強壮強精によろしい薬木を
紹介しておくことにしましょうか。
漢方の強壮強精生薬のひとつに
「五加皮(ごかひ)」というものがありますが、
これはウコギ(通称ヒメウコギ)の根皮を
細断して乾燥させたものです。
ウコギは、中国大陸原産のウコギ科の落葉低木で、
日本には古い時代に薬用として移入され、
平安時代あたりには牟古岐(むこぎ)と呼ばれていたようです。
最初のころは薬木として寺や神社などに植えられたものですが、
やがて人家の生垣などに使われるようになり、
いまではあちこちに広く野生化しています。
このウコギとは別に、日本の在来種としてヤマウコギがあり、
こちらのほうも五加皮の代用として
長く利用されてきた歴史がありますから、
薬用上では両者を区別する必要はないと
考えてさしつかえありません。
ちなみに、外見上の両者の相違点は、
ヤマウコギの枝にはトゲがあるのに対し、
ウコギにはトゲがないことと憶えておくと便利です。
ウコギ、ヤマウコギとも、
パルミチン酸、アラキン酸などからなる脂肪油や
メトキシサチルアルデヒドなどを含み、
強壮強精のほか鎮痛作用にすぐれ、
腰痛やリウマチなどにも効果があります。
用法は、1回量として五加皮2〜3gを
200ccの水で煎じて服用しますが、
五加皮を自分で調達する場合には、
木を必要以上に傷めないために、根皮を剥ぐのは避け、
枝を細断して用いるようにしたいものです。
また、枝を細断して乾燥させ
ホワイトリカーに漬け込んだウコギ酒
(酒1.8Lに対し0.9〜1L、氷砂糖100g、
枝は1ヵ月後に取り出しておく)は、
強壮強精、鎮痛のほか、更年期障害や不眠症にも効果があります。
ところで、ウコギ類の若葉は食用にもなり
、一般にはおひたし、和え物、テンプラなどにしますが、
ウコギ特有の香りを楽しむならウコギ飯に限ります。
作り方は、塩ひとつまみ加えた熱湯にさっと通し、
水けを絞って細かく刻んだ葉に塩少々を振って
焚きたてのホカホカ飯に混ぜるだけ。
口に含むとフクイクとした香気が広がって、
それだけで健康な気分に包まれますゼ。
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ヤマウコギ |
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ウコギめし |
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