第85回 (旧暦3月25日)
強精食になるサクラ
湘南地方一帯では、もうヤエザクラもほとんど終わり、
今はウワミズザクラが咲いています。
ウワミズザクラは、名前のごとくサクラの仲間ではあるものの、
小さな花が穂状について、
ビンを洗うブラシのような姿になる珍しいサクラです。
新潟県や福島県の一部には、
昔から「杏仁子(あんにんご)」と呼んで珍重する
強壮強精食がありますが、その杏仁子の正体は、
実はこのウワミズザクラの花(つぼみ)や
未熟果の穂の姿のまま塩漬けにしたものなのです。
ウワミズザクラには、
アンズの種子に含まれるのとおなじベンズアルデヒドや
配糖体のプルナシン、ペクチンなどが含まれていて、
強壮強精のほか、咳止め、去痰、ゼンソクなどに効用があり、
塩漬け以外にも果実酒や健康茶としても利用できますから、
この花や実を見つけたら一度試してみませんか。
とくに、熟果で作る果実酒は、薬効もさることながら、
嗜好飲料としても一級のチェリー・ブランデーとなりますゾ。
杏仁子の作り方は、花穂または未熟の緑果を穂ごと摘み採り、
水洗いせずそのまま塩漬けにしますが、
過飽和状態に塩を振って軽く重石を載せ、
全体が黒褐色になれば出来上がりです。
一方、果実酒のほうは、夏期に熟した穂を摘んで実をしごき取り、
35度のホワイトリカー(ブランデーでもよい)に漬けますが、
分量は酒1.8Lに対して果実0.9〜1L、氷砂糖100gが基準です。
このとき、黒熟果だけでなく、
完熟前の赤果を3分の1ほど混ぜてやると、
ひときわウマイ酒に仕上がります。
また、健康茶にするときは、つぼみの多い花穂を採り、
そのまま日陰に干して乾燥させ、
適当な大きさに刻んで保管しておいたものを
お茶代わりに飲用すればヨロシイ。
なお、ウワミズザクラのように穂状の花をつけるサクラには、
シウソザクラ、イヌザクラ、エゾノウワミズザクラなどがあり、
これらもウワミズザクラと同様に利用できます。
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ウワミズザクラ |
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ウワミズザクラの花穂 |
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