第72回 (旧暦3月12日)
ヤエザクラの利用法
関東地方南部ではヤマザクラとソメイヨシノも盛りを過ぎて、
これからヤエザクラの季節を迎えます。
サクラのなかまには200を超える園芸品種があり、
これらを総称してサトザクラと呼びますが、
このサトザクラのうち
八重咲きの花をつけるものが「ヤエザクラ」です。
ヤエザクラにも、関山、東錦、松月、天ノ川など
いろいろな品種があって、
花の色も白〜桃紅色とさまざまですが、
雌雄のしべが花弁化するために、
一部の例外を除いては受精能力がなく
ほとんどの品種は実を結ばないのが特長です。
しかし、ヤエザクラの花には、
クマリン、サクラニン、
サクラネチン、アミグダリンなどが含まれていて、
精神安静、安眠、酔い覚まし、
のどの痛みや去痰、美容などに効用があり、
古くから桜湯(桜の花茶)や花酒などに利用されてきました。
桜湯は、お見合いなど祝いの席に出される花茶ですが、
ヤエザクラの花を花柄ごと摘み採って
(水洗いせず)塩漬けにしたもので、
誰にも簡単に作れますから試してみるとヨロシイ。
祝いの席でなくとも、
来客などに出すと存外よろこばれるものですゼ。
一方、花酒のほうは、つぼみ〜半開の花を摘み、
(水洗いせず)ホワイトリカー1.8Lに対して1L、
氷砂糖100gを加えて漬け込み、密封して冷暗所で寝かせます。
3〜4か月で淡黄〜淡黄褐色に熟成し、
ほのかな桜の香りがするリキュールに仕上がりますが、
花は1週間で取り出しておきます。
もちろん、花茶、花酒とも上記の効用がありますから、
花を眺めるだけでなく、
こういう利用法でも楽しんでみてはどうでしょう。
また、夏季に桜(どのサクラでもよい)の樹皮を剥いで、
内皮(あま皮の部分)を乾燥させたものを
桜皮(おうひ)と呼びますが、
これにもサクラニンやサクラチネンが含まれていて、
ゼンソクやのどの痛み、去淡、湿疹や化膿体質の改善などに
これを煎服する民間療法もあります。
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