第68回 (旧暦3月8日)
ハリギリを探してみよう
まな板、包丁の柄、しゃもじ、お椀、おひつ、
風呂桶、味噌やしょうゆの樽……。
日本人は古くからさまざまな生活用具を
身近な樹木を利用して作ってきました。
そして、箪笥(たんす)にはキリが、
風呂桶にはヒノキやサワラ、コウヤマキが、といったように、
それぞれの道具の性質や機能に応じて、
それにもっともふさわしい材質の木を
見つけ出して利用してきたのです。
こうした世界有数の「木の文化」が発達したのは、
日本列島が暖温帯に位置し、
多種の樹木の生育に恵まれたからにほかならず、
それは実にこまごまとした物にまで及んでいます。
それでは、桶や樽の栓(せん)には
どんな木が使われてきたか知っているでしょうか?
それはハリギリというウコギ科の落葉高木ですが、
この木は下駄(ゲタ)のほかに
木栓として多用されてきたために、
「センノキ」という別名で呼ぶ地方が少なくありません。
20mほどの高さになり、幹や枝に鋭いトゲがたくさんあって、
カエデに似た葉っぱの木といえば
「ああ、あれがそうか」と思い当たる人も多いはずです。
湘南地方では、ちょうど今時分が新芽を出す時期にあたり、
この新芽は塩ひとつまみ加えた熱湯で軽く茹でて和え物、
おひたし、煮物にするほか、
そのままテンプラにするとオイシク食べられます。
またウコギ科の植物は日本に18種類ありますが、
その多くがすぐれた薬草薬木で、
オタネニンジン「朝鮮人参)やトチバニンジン、
ウド、タラノキなどもこの仲間です。
ハラギリも、漢名では刺楸(ししゅう)と呼び、
根皮を煎じて去痰やのどの痛みに用いるほか、
慢性の腎臓病に樹皮を煎じて飲用する民間療法などがあります。
食用に新芽を摘むときは、左手で枝をささえ、
右手の親指で芽元を向こう側に押し倒すようにすると
きれいにポキリと摘み採れますゾ。
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ハリギリの新芽 |
ハリギリの木 |
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