第63回 (旧暦3月3日)
山菜の上手な持ち帰り方
本来、どの植物も、その種固個有の
味や香りを持っているものです。
栽培される野菜類もモチロン例外ではありませんが、
野菜の場合には、毎日食べても飽きないように
品種改良など栽培の過程でそれが弱められているのですナ。
しかし、人間の手が加えられていない山菜は、
その個有の味や香りをそのまま残しており、
これが「アク」と呼ばれるものなのです。
つまり、山菜に含まれるアクという成分は、
それぞれの山菜の個性であり、持ち味であり、いってみれば、
その山菜のアイデンティティであり、
われわれが山菜を好んで食べるのはそのアク味をこそ
楽しむためにほかなりません。
ところが、いかにそのアク味が山菜の持ち味とはいっても、
それが強くなり過ぎてしまっては、
今度はわれわれの味覚がそれを受け容れなくなってしまいます。
しかも、山菜が持っているアクは、
摘み採られると急速に進行する性質がありますから、
そのアクの進行を少しでも進めないように
配慮して持ち帰らなければなりません。
山菜食の盛んな地方では、昔から竹やつるで編んだ篭類に
山菜を容れて持ち運びしていますが、
実は、これは山菜のアクの進行を抑える意味もあったのでした。
それは、山菜はムレたり乾燥したりすることによって
傷むのが速く、アクも強くなりますから、
ムレさせず、通気性の良い篭類が山菜の容器として
最もすぐれているからです。
山菜取りに出掛けると、採った山菜をビニール袋に
入れている人を少なからず見受けますが、
通気性のないビニール袋に入れてしまっては、
せっかく採った山菜をわざわざ傷めているようなものなのです。
したがって、何かの理由で篭類が使えないときは、
摘んだ山菜のゴミや汚れを落とし、
濡れた新聞紙に包んで大きめのビニール袋に納め、
空気を十分に吹き込んでから口を結んで持ち帰ると、
長時間でなければあまり傷めないですむものです。
また、クルマを利用する場合なら、
発泡スチロールやダンボールの箱などの底に
濡れた新聞紙を敷き、その上に山菜を並べ、
上からまた濡らした新聞紙をかけて持ち帰るとヨロシイ。
|
山菜は通気性のよい入れ物に |
|