第52回 (旧暦2月22日)
仙人流お花見の術
今年の桜前線は4〜5日前に高知県に上陸し、
いま少しづつ北上しています。
そこで今日は仙人流のお花見の話じゃ。
何年か前のことですが、
ある新聞の片隅に「吉野(奈良県)の桜が
ナラタケ菌にとりつかれ、
下千本では9割までが冒されている」という
小さな記事を目にしました。
つまり「ナラタケ菌にとりつかれると桜が枯れてしまう、
サア大変だ」というワケですが、
これを見て「まあ、桜がカワイソウ!」なんて考える人は
仙人にはなれませんゾ。
おおよそ仙人道を志す者は、こんな記事を見つけたら、
ヤオラ吉野山の方角に向けて居住まいを正し、
柏手の二つや三つも打ち鳴らした後に
バンザイの三唱くらいは称える心掛けを持たなければイケマセン。
どういうことかといえば、
吉野の桜がナラタケ菌にとりつかれたということは、
こと仙人の眼からすれば
「吉野の山で近々ナラタケが大発生しそうだヨ」という
ウレシイお知らせにほかなりません。
このナラタケというキノコは、
英名でハニー・マッシュルームというわれるごとく、
ほのかな甘い香りがあり、
良いダシが出るうえに歯切れも口あたりも上々で、
どんな料理にも使えるという結構ずくめのキノコです。
そこで、よろしいですかナ、
たとえば下千本に1000本の桜があるとして、
1本の木に10本ずつのナラタケが生えたとしたら合計で1万本、
100本ずつなら10万本ですゼ!
しかも、吉野の山に桜を見にいく人間は
掃いて捨てるほどいても、
この桜の名所にキノコをとりにいくような
酔狂な人間はまず居ないから、その10万本は1人占め!イヒ。
こんなウマイ話を見逃すなんて、
それこそ仙人の沽券(こけん)にかかわる
というものじゃないですか。
それに、もうひとつのウレシイことは、
このナラタケというやつは、秋だけでなく
春に発生することも珍しくないということです。
だとすれば、吉野の山では、お花見をしながら
キノコ狩りを楽しめるというゴクラクを味わえそうだ、
ということになるのですゼ。
吉野に生きたい人、この指とまれ!
ナラタケの群生
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