第50回 (旧暦2月20日)
野生のエンドウたち
春分を過ぎて、いよいよ春直前。
鎌倉の野ではカラスノエンドウの紅紫色の花が
日ごと目につくようになりました。
カラスノエンドウは、漢名では翹揺(ぎょうよう)と呼んで
膵臓炎の薬草として用いられますが、
若苗は和え物、おひたし、
テンプラなどにして食べられますから、
野歩きの途中に見つけたら一度試してみてください。
また、花の後につけるサヤエンドウを小さくしたような豆果も、
エンドウとおなじ方法で食用できるので、こちらもドウゾ。
この野生のエンドウをカラスノエンドウと呼ぶのは、
豆が熟すとサヤが黒くなるからですが、
春の野辺にはこれとは別に
「スズメノエンドウ」と「カスマグサ」という
ニ種類の野生エンドウがあり、
こちらもカラスノエンドウ同様に利用できます。
スズメノエンドウは、熟すと「スズメ色」になるからではなく、
カラスノエンドウに較べてウンと小型であることから
「カラス」に対して「スズメ」の名が付けられたもの。
それでは「カスマグサ」の「カスマ」って、
どんな意味だか判りますか?
実は、カスマグサというのは
カラスノエンドウとスズメノエンドウの中間の大きさのため
「カラス」と「スズメ」のあいだ、
つまり「カ」と「ス」の「間」という意味なのですナ。
カラスとスズメの中間であれば、
ハトノエンドウでもカケスノエンドウでも
良かったのではないかと仙人は思うのですが、
こうして名前の由来について考えてみるのも
植物と親しくなるひとつの方法ですから、
身近な植物をこうした観点で見直してみてはどうでしょうか。
なお、今ごろの季節に海へ行くと、
やはり野生エンドウのひとつであるハマエンドウが
青紫色〜紅紫色の艶かな花を咲かせています。
このハマエンドウも食べられますが、
豆には弱い毒成分が含まれていますから、
必ず煮炊きして熱を通して食べることです。
カラスノエンドウ
ハマエンドウ
|