第42回 (旧暦2月12日)
竜宮城の露天風呂
今年は例年より10日以上も早く春一番がやってきました。
春一番が吹き荒れた翌日に海辺へ行くと、
おびただしい海藻の群れが
波打ちぎわに打ち寄せられているのが目に止まります。
この打ち寄せられた海藻の中には、
ワカメやヒジキなども混ざっていますが、
木の枝のような長い茎先に天狗のウチワのような形をした
黒褐色の大きな葉をつけた海藻がたくさん見られるはずです。
これはカジメという褐藻類コンブ科の海藻で、
カリウム、ヨード、アルギン酸を多く含むため、
それらの製造原料とされるほか、
沿海地では古くから食用にされてきました。
仙人も何度か食べたことがありますが、
ワカメより硬くて味もイマイチ。
そこで仙人は、最近ではもっぱら
これを風呂にほうり込んで海藻浴を楽しんでいます。
このカジメ湯は、皮ふ組織を活性化させ、
肌にうるおいを与えて美肌作りに有効なばかりでなく、
外傷、しっしん、かぶれなどの皮膚の炎症や
アトピー性皮膚炎にも効果がありますから、
海辺でカジメを見つけたときは、
持ち帰ってぜひ試してみて下さい。
葉のつけ根の部分を横に強く押すと、
ポキリと折れて茎を取り除けるので、
葉だけをビニール袋に詰めて持ち帰り、
ザブッと水洗いして砂を落としてから
沸かした風呂にそのままほうり込めばヨロシイ。
5分もしないうちにヨードが浸出して褐色の湯に変わり、
プーンと潮と海藻の香りが漂ってきます。
ユラユラと揺れる海藻の間に身体を沈めていると、
まるで竜宮城の露天風呂に浸っているような気分になれますゼ。
いつだったか、弟子のナオちゃんにこれをすすめたところ、
何日かしてナオちゃんはこう言ったものです。
「あのネ、ナオちゃんは人魚になったような気分だったけど、
ママはきっとジュゴンかアザラシになったような
気分だったんじゃない?」
ヨードたっぷりのカジメ。風で海が荒れた翌日がネライメです
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