第40回 (旧暦2月10日)
見えないモノが見えてくる
今日は植物種子の「発芽」ということについて
少し紹介しておくことにしましょうか。
植物の種子というのは、新しい生命の素ですから、
一定の休眠期間を経て芽と根を伸ばして生長を始めます。
このとき、野生の植物であれば、
その種(しゅ)が本来持ち合わせている生長リズムに従い、
それぞれの環境に適応した状態で行われているのですが、
米(イネ)や大豆のように
人間によって古くから栽培されてきた植物は、
品種改良という「人間の手」が加えられていますから、
それを発芽させてみると、
ふだんは気が付かないような
いろいろな問題が浮かび上がってくるのです。
たとえば米の場合、現在日本で栽培されている品種は
100種類を大きく超えますが、
コシヒカリに代表されるような改良型の品種は、
赤米のような原種に近い品種と較べると
発芽時間が数時間も余計にかかりますし、
同一の品種でも、農薬を使って栽培した米と、
無農薬栽培の米とでは、やはり無農薬のもののほうが
短い時間で発芽します。
つまり、「人間の手」がより多く加えられたものほど
発芽に要する時間が長くなるということですが、
発芽時間が余計にかかるということは、
それだけ植物体としての本来の生命力が
衰退していることを意味しているのです。
また、自然食品を扱う店で売られている玄米食用の米でも、
通気性の悪い袋に長く封入されているものは、
酸欠で仮死状態になっていて、
発芽させてみるとほとんど芽を出さないこともありますし、
同一の袋でも古米などが混入している場合には、
発芽時間がバラバラになったりします。
このように、自分が普段食べている米を発芽させてみると、
無農薬だと信じていたものがそうでなかったり、
良い米だと思っていたものが、
実は芽を出す力を失った死んだ米であったことなど、
売り手側の説明や表示では決して見えないモノが
見えてくることが少なくありません。
しかも、これは米だけのことではなく、
小麦も大豆もすべておなじことがいえますから、
この機会に「発芽」ということを
少し意識してみることをススメます。
ルーペでのぞくとよくわかる。これが芽を出した玄米。
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