第38回 (旧暦2月8日)
仙人自慢の「ドライ・ジン」
海岸のクロマツ林の林床などで、
針状に尖った短い葉を密生させた枝を
四方に広げている背の低い木を見かけたことはありませんか?
これはハイネズというヒノキ科の常緑低木で、
よく見ると、枝先に表面に白い粉を帯びた
直径1cm内外の丸い実を
2〜3個ずつつけていることに気が付くはずです。
俗界には、トウモロコシや大麦、ライ麦などを原料として、
ネズの実で香りを付けた
「ジン(gin)」という蒸留酒がありますが、
仙人はハイネズの実でこれを作るのですナ。
作り方はカンタン。
水洗いしてよく水気を切った実を
35度のホワイトリカーに漬け
(酒1.8リットルに対し0.4リットル。氷砂糖100g)、
そのまま3〜4か月冷暗所で寝かせれば出来上がりです。
ハイネズには、ユニペノール、イソデキシトロピン酸が含まれ、
強壮、発汗作用、解熱作用、健胃整腸作用などがありますから、
ただ酔っぱらうだけの俗界のジンと較べると、
仙人流のジンはグーンとヘルシーなんですゾ。
だから、仙人が作るこの酒は、
カタカナでそっけなく「ジン」などとは書かず、
正しくは「仁」と書くのでアリマス。
また、ハイネズの実を空ビンかペットボトルに
3分の1ほど詰め、砂糖を加えて八分目まで水を注ぎ、
よく振った後(栓をしてからネ)、
日なたに2〜3時間置いておくと即席のサイダーが作れるため、
家族で海に行ったときは、
オトーサンはこの「仁」の材料として、
子供はサイダーの材料として
ハイネズの実を摘んで帰るとヨロシイ。
ハイネズの実は、秋に結実して翌年の秋に紫黒色に熟すので、
一年中いつでも収穫できますから、
潮干狩でも海水浴でも、海に遊びに行ったときは
付近の砂浜をちょっと覗いてみることです。
海でも山でも野原でも、自然のフィールドへ出掛けたときは、
このように「手ぶら」で帰らない習慣を身に付けるのも
大切な仙人術のひとつなのです。
海辺に生えるハイネズ
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