第29回 (旧暦1月29日)
生物の分布を読む術
今日は渓流釣りの解禁日。
渓流釣りというのは、イワナやヤマメ(アマゴ)、
ニジマスなどのサケ科の淡水魚を対象とする釣りですが、
これらの魚は秋に産卵して冬場に孵化(ふか)するため、
自然保護の目的で10月1日から2月末日まで
禁漁期間とされるのです(一部河川では2月1日に解禁となる。)
外来種で日本の河川での自然繁殖が
ほとんど見られないニジマスは別として、
イワナもヤマメ(アマゴ)も冷水域に棲む魚ですから、
これらの魚を求めて釣りに出るときには
常にその魚の分布域ということを
頭に入れておくことが大切になってきます。
そこで今日は、動物や植物の「分布域」ということについて
考えてみることにしましょう。
分布域というのは、その生物が自然繁殖して
生育できる地理的範囲をいいますが、
ほとんどの生物は、その分布域内でも
すべて均等の条件下で生きているわけではありません。
つまり、分布域にはその中心域があると同時に、
その種(しゅ)がギリギリ生存していける
限界的地域もあるということで、
南限とか北限とかいうのがそれに該当します。
それでは、その中心域と限界域とではどのような違いがあるか、
ということになりますが、大雑把にいえば、
中心域はその種の生存にとって最も好適な条件下
(魚であればエサの量や水温など)にあり、
限界域ではその条件があまりヨロシクナイということです。
そうすると、あるひとつの重要なことに
気付かされるのではないでしょうか。
それは、動物にしろ植物にしろ、
われわれがそれを食べたり薬に利用したりするときには、
分布の限界域のものではなく、
中心域のものを選んだほうがよさそうだということです。
なぜならば、その生物の生育にとって
恵まれた環境下で育ったものは、味はモチロン、
栄養や薬理的有効成分も限界域のものに較べて
旺盛であるからにほかなりません。
したがって、自然の動植物を食料や健康に利用するときは、
こうしたマクロな目で判断することも
忘れないようにすることです。
渓流釣りは3月1日に解禁となる川が多い。
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