第12回
冬だからこそ見つけやすいものもある
もしかして、冬は野歩き、山歩きの
オフ・シーズンだと思い込んではいませんか?
でも、自然には、春があり、夏があり、秋があり、
そして冬があって、それぞれの季節ならではの姿があります。
したがって、枯れ山であれ枯れ野原であれ、
そこへ足を踏み入れる人間の側に、
自然に対するササヤカな好奇心と
新しい発見に対して素直に驚きと
よろこびを感じられる感性とさえあれば、
自然は裏切ることなく常に感動を与え続けてくれるものです。
たしかに冬の野山は、目を楽しませてくれる
花や実もありませんし、収穫のよろこびも
あまり多くはないでしょう。
しかし、その反対に、たとえば他の季節では
足を踏み込めないようなヤブにも入りやすくなりますし、
どんな大木でも葉が落ちつくしてテッペンの枝先まで
見透せるようになるではありませんか。
ものはためしに、そういう意識を持って
エノキ、クリ、ケヤキ、コナラ、ブナ、ミズナラなどの大木を
下から仰ぎ見てください。
そうすると、裸の梢(こずえ)のあちこちに、
サッカーボールくらいの大きさの鳥の巣のような
球形の塊りがくっついていることに
しばしば気がつくはずです。
これはヤドリギという常緑性の半寄生植物で、
梢の葉が繁っている季節には
葉っぱの緑に紛れてなかなか識別しにくいものの、
宿主の樹木が葉を落とす季節になると、
その特異な姿から遠目にもよく見えるようになります。
つまりヤドリギの姿を目にしたければ、
冬場に探すのが最適、ということですね。
このように冬になればこそ気が付いたり
目にしやすくなったりするものも
思いのほかたくさんあるものですから、
暖かな日には積極的に冬の野山を
歩いてみることをおすすめします。
ところで、このヤドリギですが、
ルペオールや果糖、ペクチンなどを含み、
強壮、健胃整腸、腰痛などの働きがありますから、
果実と茎葉を薬酒にして飲用するとヨロシイ。
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