元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1356回
ガン新聞報道はこれでいいのか?

05月04日(木曜日)付、
朝日新聞の第一面のトップに
“「がんに効く?」厚労省研究班が手引”という
タイトルの大きな記事が掲載されました。
この代替医療に関するデータは、厚生労働省研究班
(主任研究者=住吉義光・四国がんセンター病棟部長)が、
一般向けの手引をまとめ、
日本補完代替医療学会が監修するという、
公的機関が真摯に取り組んだという意味では、
とても評価の高い客観的調査です。

これは、このコラムでも何度も紹介しましたが、
2002年、「全国のがん専門病院56施設の入院・外来患者の、
45%が代替療法を試したことがあり、
うち90%が海草やキノコ類などの健康食品を利用、
平均費用は月5万7000円にのぼる」・・・という、
厚生労働省研究班の調査を受けて、
いま増加しているガン代替療法の実態の、その後の検証です。

ただし、この報告を扱った新聞記事の姿勢には
気になるところがありました。
代替療法の利用者が増える中で、
代替療法とどう向き合えばよいか?

「情報選別の助け」
「考える第一歩」になると結論付けていましたが、
内容紹介の引用が、
どうしても、昨年の「アガリクス本」薬事法違反事件との関わりを
ニュースにしたかったのでしょうか?
アガリクス、プロポリスなど5つの健康食品の検証表だけを
クローズアップし、「証明 ほぼなし」と見出しを打って、
問題の焦点をぼやかしていることです。

たしかに、この「手引き」報告書を、
よく読んでみれば分かるように、
ヒトでの臨床試験や複数の試験の例が少ないので、
代替療法の「科学的検証性」は疑問なわけですが、
こと、激増するガンに関わる国民的課題を
第一面でトップ記事として報道したいのならば、
ただ役所の報告書を「丸写し抜粋」し、
恣意的に「引用」するだけでいいのか?
これが、ガン患者から見れば“情けなくなる”ような疑問でした。

マスコミには自主取材報道があるゆえに、
報道・表現の自由も、
取材源の秘匿も認められているのですから、
ただ「官製報道」を丸写して、
自らが「行司」気分で
高見の見物を決め込んでいるのは
おかしい立場です。
自らの取材総力を挙げて、自らの手で、足で
いま緊急の「国民的いのちの課題」について調査、分析し、
見解、提案を載せるのが読者への当然の使命でしょう。

こと、ガンに関わる薬や食品については、
ただ「効くか、効かないか」といった
短絡的なクイズ番組もどきの“丸写し記事“は、
かえて多くの患者が混乱を起こす素となるのです。

ガンに関わる治療の問題は、役所、大病院、
医師のサイドからだけでなく、
300万人以上のガン延命患者サイドが凝視している
かけがえなき「いのちの問題」なのです。
また、このガン治療の背景には、
近代医療制度の限界、
保健医療制度によるマニュアル治療化現象の欠陥があり、
また長寿難病社会の医療費負担増の
複雑な問題が覆いかぶさっています。

ガンひとつの記事にしても、
いま新聞に問われているのは
「いのちの医療」をどう等身大で構造改革すべきか?
これでしょう。
国民の半分がガンになるといわれているときですから、
マスコミとて、役所頼みで「高見の見物」は許されません。

もうひとつ、気になることがあります。
「アガリクス本」摘発事件以前までは、
こうした書籍の大きな宣伝広告を
たくさん載せていた新聞社ですから、
まず、自らの報道姿勢の表明も「隗より始めよ」です。
本来のマスコミらしい、ガン治療のあり方、
長寿難病時代の「いのちの医療」のあり方、
そして代替療法への見解、
さらに世界も注目している統合医療の可能性などについても、
独自の記事が構成されることを期待してやみません。


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2006年5月14日(日)

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