第818回
中国を知るなら「風水」を見るべし
中国の諺に
「黄山をみないで山を見たということはできない」
というものがありますが、
全山に生い茂る松、岩山、
そして、漂う大気はすばらしいものでした。
自然環境の中で
いのちの生気エネルギーを吸いたい
「からだ、こころ、そして周辺環境」を整えて、
生命場エネルギーを高めよう――、
という願望は、晴天の黄山でとにかく満足できたわけですが、
今回の旅は、もうひとつ、
その山ろくの村々で、伝統的に守られている、
風水環境学の生きた事例を見ておきたかったことにあります。
山ろくの黄山市には、
三区(屯渓区、黄山区、徽州区)、
四県(歙県、夥(い)県、休寧県、祁門県)があり、
まだ観光案内では知らされていませんが、
このあたりは「江西風水」の源流の地なのです。
斉雲山という風水に影響された道教の聖地があり、
夥県には明清時代に風水で設計された
古民居・西逓と宏村が残っており、
また、休寧県萬安では羅盤という
風水方位器がいまなおつくられている――
まさに“生きた風水”を目の当たりに見ることができるのです。
もちろん、古民居・宏村(こうそん)と西逓(せいてい)も、
世界遺産に登録されています。
まず西逓は、黄山市の中心街・屯渓(とんけい)から西へ、
車で30分くらいのところにあります。
ここは明清時代に「徽商」(きしょう)と呼ばれる
裕福な人たちが住んでおり、
胡氏一族の居住地。
入り口の広場には「牌楼」(はいろう)という
大きな石門が立っています。
この牌楼は中華街の入り口でよく見かけるものに似ていますが、
「風水思想」に基づいて東西南北を象徴する動物が
彫り込まれるといわれています。
風水の理想的な土地とは、
北側に山をバックにし、
周りをコの字型に川が 取り囲んでいる、ということ。
さらに「東水西流」(西に向かって川が流れている)のは
さらに縁起がいいとしますが、
まさに「蔵風聚水」(風を蓄えて水を集める)ところに
繁栄はもたらされるとする
典型的な街つくりを残しておりました。
また建築物の特徴のひとつは
外にほとんど窓がないことでしょう。
どこから採光するかというと、
家の中に入るとコの字型になっており、
上は天井が空いている。
夏は暑く、風通しを良くし、
温度を下げる役割も果たすわけですが、
これまたさらに風水的な理由のようです。
風水では、水は「富」を表すので
家に降って来た雨(富)を外に逃がさない、という
理由でつくられているのです。
もし、あなたが、このあたりに旅行をすることがあれば、
中国と付き合う、中国を知るには、
「風水」を見ておくべきなのです。
旅の楽しみが深まります。
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