第675回
高山病もモノともせず
フンザもいまは
観光で成り立っているところがあるわけで、
イスラム暴動の余波で、
ホテルもみやげ物店も開店休業を続けていたわけですから、
しばらくぶりの観光客を温かくもてなしてくれたことは
いうまでもありません。
以後、快適な旅が再開されました。
■6月7日フンザ滞在――
フンザは標高2500m、
J/ヒルトンの小説「失われた地平線」の中で描かれた
理想郷シャングリラのモデルともいわれています。
ジープに乗って1945年まで栄えた、
ミール(藩王)の城であった
バルチットフォートを見学したり、
まさに御伽噺のような
小さなユートピアを垣間見たような気分になりました。
空気も乾燥しているので、
山々の大展望が欲しいままであることはもちろん、
夜は満天の星空。
真上に北斗七星が大きく光り輝いておりました。
いささかトラブル続きの旅でしたが、
ガン病棟の屎尿の臭いの中で過ごすより、
どれだけすばらしい養生法か?
何倍、いや何百倍の英気をもらえる気分となりました。
そしていよいよ、翌日、
カラコルム山脈の最大の景観の一つである、
海抜5000メートル、
中国国境のクンジャラブ峠へと、
さらに2500メートルの急勾配をバスで上ったわけです。
ガイドのWさんからは、
高山病に罹らないように、
「バスでは居眠りをしないで下さい」と注意を受けました。
高山病は急激に酸素が薄くなると、
脳に酸素が回らなくなるため、
呼吸の浅くなる居眠りはご法度なのです。
僕たち夫婦は、前にチベット高原で体験済みですので、
ダイアモクスという
緑内障の薬を半錠ほど飲んで備えました。
これは血流を活発にさせる作用があるのです。
頭痛や吐き気に悩まされることはありませんでした。
カラコルム・ハイウエーを遡り、
国境事務所のあるスストへ向かいました。
|