第1665回
人は食べるために生きている事がわかります

人間が如何に食い意地の張った動物であるかは、
週刊誌をひらいても、
テレビの番組を見てもわかります。
テレビのスイッチを入れてみて、
これという番組が見当らなかったら
温泉宿か、レストランの料理が映っているところにまわすのは
多分、私一人だけではないでしょう。
テレビに映っている料理のつくり方を見ていると、
ゲストがいくらおいしそうな顔をしても、
これはまずいぞとすぐにわかってしまいます。
味オンチに味見をさせる番組がハヤっているだけに、
本当に役立つレストラン案内は
誰もが待望しているところです。

そう考えたので、最初の頃、
読者の皆さんにおいしい店があったら
教えて下さいと呼びかけました。
でも個人差が激しいのと、
文章に説得力がないのとで
思うように成果が上がりませんでした。
たまたま友里征耶さんの書いた
「シェフ、板長を斬る 悪口雑言集」という
料理屋の悪口を満載した本が目にとまり
「これだ」と思わず膝を叩きました。
おいしいという評判の店を訪ねて
サービスが悪い上に
目の玉のとび出るような勘定を払わされると、
「なあんだ、こんな店」と
誰しも毒つきたい気持になります。
友里さんの「行っていい店、わるい店」
高いアクセスを誇るようになったのは
決して故なきことではありません。

「或る日、食に目覚めて」と題して
イタリア料理のことをとりあげて下さった
井川直子さんには
北京の「イル・ミリオーネ」のシェフまで
紹介していただきましたが、
「蕎麦屋酒」の著者、古川修さんの
「私のスーパーグルメ術」はスタートするや、
たちまち食いしん坊たちの心をとらえてしまいました。
どこの何がうまいかというのも
大へん役に立つ情報ですが、
グルメの究極は何と言っても
ふだん自分の家で
どんな物を食べているかによって決まります。
そういう点で誰にも負けないという自信のある方は
どうぞ手をあげて下さい。
ついでに申せば、食通の人に貶された店でも
私は自分の舌で確めるために
一度は行って見ることにしていますので、
悪口を言われた店は
めげずに頑張って下さい。


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