至福の一皿を求めて おいしさの裏側にある話

第1回
おいしいもの、好きですか?

はじめまして。
のっけからなんですが
おいしいもの、好きですか?
私は大好きです。
いちばん手っ取り早く、確実に幸せになれます。
イライラしたとき大好物を口に放り込めば
顔も心なしかフニャ〜、となります。
親子げんかにも効きます。
夫婦の関係も修復可能です。
世界平和にもいいでしょう。

おいしいものを作る人は
ジョエル・ロブションの言葉を借りれば
まさに「人に幸せを与える」人です。
そんな人々や、おいしいものを供する店や
おいしいものが生まれる場所などに関するあれこれを
これからお話ししていきたいなと思ってます。

と言っても、私はまだ目覚めたばかり。
それに好みは人によってかなり違うので
私にとっておいしいものが
あなたにとってどうかはわかりません。
今までも、友達に「おいしいお店知らない?」
と訊かれて、ためらってしまうことがありました。
教えたくないからじゃなく
もし「いまいちだったじゃん!」って言われたら
自分自身を否定されてるみたいで
立ち直れないかもしれないからです。

仕事でレストランに取材するときは
広告であれ雑誌の記事であれ
ただ単に私の趣味なのではなく、
ターゲット(または読者層)がいて
コンセプト(または編集方針)というものがあるので
伝えたい相手と伝えるべき事が明確です。

でも、何人で行くのか、何を食べたいのか
普段どんなものが好きなのか
あなたのツボはどこなのか。
全然存じ上げない相手に、
好きなものを一方的に告白するのは
けっこう勇気がいるものです。
が、ここでは思うままに言っちゃってみようと決めました。
ちょい無責任で行きます。ハイ。
もし参考になればしてください。

でも結局、おいしいものは
自分で探して、きちんと知って、
現場に行って、しっかり味わう。
この努力と、数々の裏切り、挫折、涙なくしては
得られない至福の喜びなのです。
これ、ポイントです。




2004年7月16日(金)更新
- このコラムは連載終了いたしました -

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■井川 直子 (いかわ・なおこ)
コピーライター。
これまでは雑誌広告コピーなどを手がけていた普通の食いしん坊。
北イタリア・アルバでひとりのコックに出逢ったのを機に、
2003年11月、イタリアで料理修業中の日本人コック24人を取材した
『イタリアに行ってコックになる 24 stories of Japanese in Italy.』
(柴田書店刊)を上梓。2004年1月より、ict食文化企画のHP
倶楽部アピーチョ」内の“長靴の国・四季便り”でもエッセイを連載。


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