| 第53回いで湯伝説「源頼朝」
 温泉発見人、御三家の残る1人は、鎌倉幕府の初代将軍、源頼朝です。
 全国の温泉地に発見伝説がありますが、
 なんといっても群馬県内では草津温泉が有名です。
 建久4(1193)年、鎌倉幕府が開かれた翌年、源頼朝が浅間山麓での狩りの途中で、
 白根大明神(草津温泉の入口にある)まで馬で乗り入れた際に、
 谷底に白煙が立ち昇っているのを発見したと伝わります。
 それが「白旗の湯」です。
 草津温泉へ何度も行ったことのある人でも、白旗源泉の湧出場所に気づく人は少ないようです。
 草津のシンボル「湯畑」の奥に、もう1つ小さな湯畑があります。
 木の囲いに覆われているので見過ごしがちですが、
 毎分1500リットルの湧出量を誇る立派な源泉です。
 囲いの中には小さな石祠があり、頼朝公が祀られています。
 ちなみに「白旗」とは、
 源氏を象徴する白い旗から名付けられました。
 同じ頃、中之条町の沢渡(さわたり)温泉にも頼朝は訪れています。伝説によれば、酸性度の強い草津の湯で
 湯ただれをおこした頼朝が、
 沢渡の湯に入ると荒れた肌があまりにもきれいになったことから、
 草津の「なおし湯」とも「ながし湯」とも
 呼ばれるようなったといいます。
 アルカリ性のやわらかい湯は「一浴玉の肌」といわれ、
 今でも群馬を代表する美肌の湯として親しまれています。
 温泉街の中心、共同浴場の隣に建つ老舗旅館「龍鳴館」の浴室に、
 頼朝が腰掛けたといわれる石が残されています。
 一見、何の変哲もない普通の石に見えますが、所々に傷があります。
 これは昭和10年の水害による山津波と、
 同20年の山火事から温泉街を全焼した大火を被った跡だといいます。
 
 信じるか、信じないかは、あなたしだい。
 それでも湯につかりながら石をながめていると、
 否が応にも壮大な歴史ロマンに思いが馳せるというものです。
 
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