温泉で元気・小暮淳

温泉ライターが取材で拾った
ほっこり心が温まる湯浴み話

第52回
いで湯伝説「弘法大師」

温泉発見人の御三家2人目は、
国内の温泉発見数最多を誇る弘法大師(空海)です。
その数は、北海道を除く日本各地に
5000以上あるといわれています。

弘法大師といえば、「弘法水」が有名です。
杖をついたら泉が湧いて、井戸や池になったという伝説ですが、
全国に千数百件あるといわれています。
弘法大師とは、どれほどの健脚の持ち主だったのでしょうか。
これらは、空海の歴史上の足跡をはるかに超えていますから、
ほとんどは創話ということになりそうです。

弘法大師が発見したとされる温泉は、
静岡県の修善寺温泉和歌山県の龍神温泉などがありますが、
群馬県にも伝説が残る温泉がいくつかあります。
そのものズバリ名前の付いた法師温泉(みなかみ町)が有名ですが、
川場温泉(川場村)にも、こんな伝説が残されています。

〜昔、昔。
川場の村は、水に不自由をしていました。
ある日のこと、お婆さんが洗い物をしていると、
ひとりのお坊さんが訪ねてきて言いました。
「水を一杯、くださるまいか」
でも飲み水は、遠い沢からくんで来なければなりません。
それでもお婆さんは、困っているお坊さんを放っておけず、
親切に沢まで行って水を運んできて、さし上げました。
「お婆さん、このあたりは水が不自由なのかな?」
「はい、水もさることながら、もしお湯が湧いたら、
どんなによろしいでしょう。
このあたりには、脚気(かっけ)の病人が多うございます。
脚気には、お湯がいいと聞いております」
「なるほど」と、うまそうに水を飲み終わったお坊さんは、
やがて持っていた錫杖の先でガチンと大地を突きました。
すると不思議なことに、そこから湯けむりが上がり、
こんこんとお湯が湧き出したといいます。〜

このお坊さんが、有名な弘法大師だと知った村人たちは、
この湯に「弘法の湯」と名付け、
今でも湧出地には弘法大師堂を祀っています。

これが、昔から川場温泉が「脚気川場」といわれるゆえんです。


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2012年5月26日(土)

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