第51回
いで湯伝説「日本武尊」
古湯と呼ばれる歴史の古い温泉には、
必ず発見伝説が残されています。
鳥や獣が見つけたとされる動物発見伝説と、
歴史上の偉人が見つけたと伝わる人物発見伝説です。
人物には御三家と呼ばれる人たちがいます。
全国では多少メンバーが異なりますが、
群馬県の御三家は日本武尊(やまとたけるのみこと)、
弘法大師(空海)、源頼朝の3人です。
日本武尊は古代伝説上の英雄ですが、
群馬県民がこの人の名前を見て、真っ先に思い浮かべるのが、
日本百名山の一峰に数えられている武尊山(ほたかさん)です。
武尊山には、こんな伝説があります。
〜日本武尊が東国征伐の折、武尊山に登り、
奥利根の山々の美しさを愛でたといいます。
ところが、この山を登ったことにより、極度の疲労を覚え、
余病を発してしまいました。
お供の者たちは手当てをしようとしましたが、
深い山の中で手のほどこしようがありません。
途方に暮れていると、はるか下界の谷間より、
1羽の白い鷹(たか)が空高く舞い上がり、
天空で輪を描きました。
不思議に思って谷間をのぞき込むと、
湯けむりが立ちのぼっています。
「これも神明のご加護か!」と、お供たちは喜び、
日本武尊を霊泉まで案内しました。
そして湯につかると病は、ただちに全快して、
また旅を続けることができたと伝えられています。〜
この湯が現在の宝川温泉(みなかみ町)で、
昔から「白鷹の湯」と呼ばれています。
一軒宿の「汪泉閣(おうせんかく)」には、
温泉発見の始祖として日本武尊像が祀られ、
かたわらには日本武尊を霊泉へと導いた
白鷹の像が立っています。
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