第29回
四大温泉と三名湯
群馬県には、俗に「四大温泉」と呼ばれる温泉地があります。
東の横綱と称される草津温泉、名湯の誉れ高き伊香保温泉、
今ではすっかりアウトドアスポーツのメッカとして
人気を博している水上温泉、そして四万(しま)温泉です。
しかし、四万温泉が
四大温泉に加わったのは、ここ10年のことです。
それ以前は「三大温泉」でした。
あくまでも、温泉街の規模の大きさ、
観光地としての知名度の高いビッグ3を指して
言った言葉だったのです。
では、なぜ最近になって四万温泉が加わったのでしょうか?
実は群馬県には、戦前まで
「上州三名湯」という言葉がありました。
これは、古くから湯治場として栄えた温泉地を挙げたもので、
草津温泉と伊香保温泉、そして四万温泉のことをいいました。
水上温泉は、昭和6(1931)年の
上越線の開通以降に栄えた温泉地なのです。
それ以前は湯原温泉といい、小さな湯治場でした。
その後、高度成長の波に乗り、スキーや登山の
アウトドアスポーツとともに飛躍的に発展していきました。
この事実を今に伝える、有名なカルタがあります。
群馬県民なら誰でも知っている『上毛かるた』です。
戦争が終わって間もない
昭和22(1947)年に作られたカルタには、
3つの温泉地が詠まれています。
「草津よいとこ 薬の温泉(いでゆ)」
「伊香保温泉 日本の名湯」
そして、
「世のちり洗う 四万温泉」です。
では水上温泉は?というと、
「水上、谷川 スキーと登山」という札で、
当時はまだ温泉地としては、
あまり有名ではなかったことが分かります。
ですから「四大温泉」は、
かつて「上州三名湯」と呼ばれていた
四万温泉のプライドが取り戻した雪辱の証だと
私は思っています。
現在、四万温泉には37軒の宿があり、
43本の源泉が湧いています。
そのうち40本が自然湧出しています。
まさに名実ともに「四大温泉」「三名湯」の名に恥じない
群馬を代表する温泉です。
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