温泉で元気・小暮淳

温泉ライターが取材で拾った
ほっこり心が温まる湯浴み話

第30回
湯けむりの立たない温泉

外気の冷え込む冬場に温泉地へ行くと、
旅館の浴室や道路の端から
もうもうと湯けむりが上がる光景が見られます。
「ああ、温泉に来た!」と実感する瞬間でもあります。
これが温泉の風情というものでしょう。

浴室のドアを開けると、
真っ白で何も見えなかったという経験はありませんか?
源泉かけ流しの温泉ですと、
浴槽内の湯が外気に触れて温度が下がらないようにと、
窓を閉め切っている場合が多いからです。

また、温泉の湯けむりには、多くの成分が含まれているため
水道水を沸かした家庭の風呂よりも
濃厚な湯けむりが上がるのです。
そして温泉の泉質によっては、この湯気を吸い込むことにより、
ぜんそくなどの症状を緩和する効能もあります。

ところが最近は、真冬でも、
湯けむりの立たない温泉が増えています。
ご存知でしたか?

私などは「あっ、これはヤバイぞ!」と身構えてしまうのですが、
なんの疑問を持たずに温泉に入っている人がほとんどのようです。

なぜ、湯むけりの立たない温泉があるのでしょうか?

答えは、塩素消毒をしているからです。

塩素を入れると、本来の温泉成分が
化学反応により失われてしまいます。
せっかくの温泉が、水道水に近くなってしまうということです。
また当然、塩素は気化してガスとなり、浴室に充満してしまいます。
よって、換気が必要となります。

もう、お分かりですね。
大型の温泉施設に行くと、
浴室の天井で大きな換気扇がフル回転している意味が。
本来ならば、湯けむりを抜いてしまうことは、
湯を冷ましてしまう行為ですから嫌うはずなのですが、
お客さまの健康維持のためには仕方ないことなのです。
その分、循環式装置により、常に一定の温度の湯が保たれています。

もし、こういった温泉に出合ってしまったら、
大量の塩素を投入している証拠ですから、
湯上がりにはシャワーで体を洗い流すことをお勧めします。


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2012年3月10日(土)

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