温泉で元気・小暮淳

温泉ライターが取材で拾った
ほっこり心が温まる湯浴み話

第26回
清掃時間の確認

昨年の暮れに、ショッキングなニュースが飛び込んできました。

<○○○○の温泉旅館 60代男性死亡
 レジオネラ菌で肺炎>
<基準値1800倍のレジオネラ菌が検出>

群馬県内の新聞は一斉にトップで報じました。
またしてもレジオネラ菌による死亡事故です。

この舌を噛んでしまいそうな細菌の名前が
知られるようになったのは、2002年の夏に
宮崎県の温泉施設で起きた集団感染からでした。
レジオネラ菌の感染者数は約300人、
死者7人という未曾有の大惨事となりました。

レジオネラ菌による死亡事故は以前から発生していたのですが、
その発生数が少なかったため一部では問題視されていても、
全国レベルでの対策が遅れていました。
そして、事故の多くが「循環式風呂」で発生していました。

循環式風呂とは、
温泉のお湯を何度も再利用する方式のことです。
ろ過、殺菌、加熱をしながら、エンドレスにお湯を浴槽の中で
循環させ続ける魔法の装置と言っていいかもしれません。
この装置が登場したおかげで、湧出量の少ない温泉でも
大型の入浴施設を造ることが可能になりました。
ところがレジオネラ菌にとっては、
絶好の繁殖の場となってしまったのです。

そもそもレジオネラ菌は、土中や河川に生息する細菌です。
従来のような放流式の浴槽であれば、
たとえお湯の中に入ったとしても、
流されてしまうので問題ありませんでした。
しかし、その菌が繁殖に適温とされる温度の中で循環し続けると、
爆発的に増殖し、飛沫から人間の肺に入り込み感染するのです。

決して、循環式風呂だけが危険というわけではありません。
かけ流し風呂でも、清掃が行き届いていなければ同じことです。

温泉旅館に泊まって、夜中や朝方に風呂に入ろうとしたら
清掃中だったという経験はありませんか?
「なんだよ、24時間入れないのかよ!」
と立腹される人もいますが、
実は、こうやって毎日お湯を抜いて清掃している宿が、
湯守(ゆもり)のいるいい宿
なのです。

ぜひ今度、温泉宿に泊まったら、
清掃時間の確認をしてみてください。
(客のいないチェックアウトからチェックインの間に
清掃を行っている宿もあります)


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2012年2月25日(土)

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