温泉で元気・小暮淳

温泉ライターが取材で拾った
ほっこり心が温まる湯浴み話

第9回
青い鳥が見つけた魔法の泉

「古湯」といわれる歴史の古い温泉地には、
必ずと言っていいほど温泉の発見伝説が残されています。
これには、いくつかのパターンがあるのですが、
その1つに「動物発見伝説」があります。

熊、鹿、猿、猪、犬、蛇、狐、狸・・・
傷や病を負った動物が、温泉に浸かっているのを
猟師や村人が見つけて、語り継がれているのです。

ですから史実に基づいているかどうか、ということになると、
はなはだ怪しいのですが、
動物の名前がそのまま温泉地名になっている温泉もあり、
調べだすと興味はつきません。

ところが、昭和以降に発見された新しい温泉の中には、
伝説ではなく、史実として
温泉発見話が語られている温泉もあります。

群馬県の最南端、埼玉県と隣接する上野村に
野栗沢温泉「すりばち荘」という一軒宿の温泉があります。
まさに、すり鉢のようなV字谷の底にある小さな宿です。
昭和58(1983)年に、地元に生まれ育った黒沢武久さんが、
自ら泉の水をパイプで引いてきて、旅館を開業しました。

「とにかく、この水を飲んでみろ!絶対に二日酔いしないから」と、
最初に泊まった晩に、主人に勧められて飲んだ水は、
かなり塩辛い塩化物泉でした。
ところが、この水は、ただの温泉水ではなく、
魔法の水だったのです。

ここ上野村には、昔から青い鳥が飛来していました。
東南アジアのごく限られた地域に分布する
「アオバト」という渡り鳥です。
海水を飲むことで知られる鳥で、
日本では北海道〜四国、伊豆七島などで繁殖し、
積雪のない温暖地で冬を越します。
上野村に姿を見せるのは、毎年5月〜10月の半年間だけ。
塩分の濃い、海水に似たこの水を飲みにやって来るのです。
その数、なんと3000羽!

「野栗沢の人は昔から、この鳥を捕まえて食べていたんだよ。
産後の肥立ちが悪い婦人に肉を食べさせれば、
見る見るうちに快復した。
また、この泉の水を飲みながら農作業をすると、
不思議と疲れずに仕事がはかどるんだ。
みんな水筒に入れて、畑仕事に持って行ったものよ」
と黒沢さんは、話してくれました。

現在は、アトピー性皮膚炎に特効のある温泉として、
全国から湯治客が訪れています。


←前回記事へ

2011年12月28日(水)

次回記事へ→


過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ