不良店は閉鎖せよ
経済の成長しているときは、年々、賃上げが行われる。自分の会社は儲からないから、昇給をやめておこうというわけにはいかない。
よその会社で昇給をしているのに、自分のところだけやめれば、従業員はよそに移ってしまう。だからいや応なしに、人並みの昇給をせざるを得なくなるが、そうなると、Aランクの店は何とか昇給分をこなしていけるとしても、Bランクの店は採算線上から転落するし、Cランクの店に至っては沈みっぱなしになってしまう。
こういう傾向はチェーンの輪を広げれば広げるほど際立ってくる。したがって、チェーン店商売を成功させようと思えば、チェーン店をつくっていくプロセスで、絶えずCクラスにあたる店を閉鎖してしまうだけの勇気が要求される。同じだけお金をかけてつくった店を己の意志に反して整理することは血の出るような苦しいことである。
それを押し切ってスクラップ・アンド・ビルドをやらなければならないのだから、よほどの思い切りのよさがなければ、スーパーにしても、レストランにしても、全国的にチェーン店を展開して成功をおさめることはできないのである。
のちに財務相談室を設けて、美容室や文房具店のチェーン店をひらこうと考えて相談にきた人々に、私がチェーン店の利害得失について自分なりの意見を述べられるようになったのも、自分が実地にその体験をしたからであった。また私がチェーン店を展開している大スーパーの経営者たちを見ていて、思い切ってスクラップ・アンド・ビルドをやったユニーは業績の回復が早いが、長崎屋とかユニードは駄目なんじゃないかと判断したのも、自分がそれだけの授業料を払ってきたからであった。何ごとも損をして覚えるのが一番早く覚える方法だと私は思っている。
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