小汀さんの考え方は、その後の日本経済の推移を見ても決して間違ってはいない。しかし、株価の動きとなるとまた別で、安いと思うと高くなるし、高いぞと思うと安くなったりして、専門家といえども、なかなか当てきれないのが普通である。私も小汀さんの意見に従ったばかりに、株価の上昇に乗り遅れてしまったが、それからしばらくして株価の暴落がはじまった。
ある日、テレビを見ていたら、漫画家の近藤日出造さんの番組に、小汀さんがゲストとして出てきた。近藤さんはご承知のようにズバズバと物を言う人だから、小汀さんをつかまえて、
「小汀さんは、日本経済はこれからよくなるからと、盛んに株をすすめておられましたが、株価はえらいことになってしまいましたね。こりゃどういうことですか?」
と、ゆさぶりをかけた。小汀さんはたいへん素直な人だから、
「いやーあ、本当に相すまんことでした」
と率直に非を謝った。近藤さんはすっかりあわてて、
「小汀センセイ。謝らなくてもよろしいんです。私の友人はテレビで小汀センセイが株を買えとすすめておられたので、経済評論家の予想は大体、当たらないから、このへんで売っておいたほうがよいだろうと言って、ちゃんと売り逃げたそうですから」
「いやーあ、いやいや」
と小汀さんはもう一度、頭を抱えて恐れ入ったので、私はテレビを見ていて、思わず爆笑してしまった。
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