予想は話半分で
こういう具合に、権威といわれる人の予想でも当たるとは限らない。いや、当たらなくても少しも不思議ではない。株価を動かす要素は無数にあって、専門家でも思い及ばないようなことがいくらでも起きるからである。その意味では、私も世間から権威と目されるようになれば、結果は同じで、私の言うことも、話半分にきいておいてちょうどじゃないかと思う。現に私自身、自分の予想がはずれることも予想に入れているので、予想がはずれた場合の二段構え、三段構えで、危険の分散をはかっている。
たとえば、私は半導体の技術革新がこれからの世の中を変えると思っている。その点では半導体技術の最先端にいる東北大の西澤潤一教授と物の見方が一致している。半導体の技術革新がすすめば、通信機器はいうに及ばず、家庭内の生活様式からオフィスの機能まで一変してしまうから、企業の業績にも大きく影響するし、株価も居所を変えてしまう。二年後、三年後のことを考えたら、恐らく日本電気とか、富土通とかいった株が産業界の花形人気株として株式市場を賑わすようになるだろう。
しかし、昭和六十年のはじめからアメリカにおけるパソコンの売れ行き不振に端を発して、半導体の値段は大暴落につぐ大暴落で、売り値を十分の一に下げてしまっている。株価もそれを反映して、高値の六割まで下がってしまった。もう一ぺんか、ニヘん、さらに下げることがあるかときかれたら、私はあると答えるだろう。
私自身は、半導体の市況は昭和六十一年の三月にも恢復のキザシはまだ見えないだろうと考えている。だから、あと二回くらいは失望売りがあると見ている。
もしそのとおりだとしたら、株は底値に達するであろう四月以降になってから買えばよい。うまく底値をさらうことができたら、この次の上昇期には恐らく軽く倍にはなるだろう。個人投資家にとって二年間に倍になるようなことが起れば、千載一遇のグッドチャンスといってよいだろう。 |