虎ノ門漢方堂店主・城戸克治さんの
やさしい漢方の話

第291回
「黒酢の暗い過去」

25年ほど前に
爆発的なブームを引き起こした商品が
二つあったという話を
先日、このコラムで取り上げました。
一つがビタミンEで、残る一つが
現在また、ブームになっている「黒酢」です。

当時、「あるある大辞典」や
「おもいっきりテレビ」などの
大掛かりな健康娯楽番組はほとんどなく、
黒酢のブームは
多くの体験談を掲載した
いわゆるバイブル本によって作られました。

その中で一番、悪質だった会社は
「酢は身体にいい」
という先入観を巧みに利用し、
黒酢や電解カルシウムを飲んで
アレルギー性鼻炎(現在でいえば花粉症)、
アトピー性皮膚炎、喘息が治ったという
おおげさな体験談を多数でっち上げたり、
各地で講演会を毎日のように開催し
医学博士の肩書きを持った人たちに
もっともらしい無責任な解説を話させたりして、
患者さんに何十万円分もの商品を買わせる
巧妙なシステムを作り上げていました。

また、当時は現在のように
通販システムが発達していなかったため、
この会社は
全国の薬局・薬店を組織化し
販売ルートを構築していましたが、
全国各地でいろいろな問題を起こし続け、
とうとう最後には
国会でも取り上げられるほどの
大きな事件にまで発展してしまいました。

“水に流す”ことは
日本では美徳の風習とされていますが、
他の国々においては
そうでない場合のほうが多いものです。
当時の騒ぎを知るものとしては、
いくら巧妙に形を変えても、
大きな社会問題まで引き起こした
黒酢とバイブル商法の関係を
水を流すように見過ごすことはできません。

皆さん、落ち着いてよく考えてみましょう。
酢はあくまで調味料の一種で、
米やパンなどの主食ではありません。
また、しょう油やソースにだって、
黒酢に含まれているような量の
天然アミノ酸は何種類も含まれているのです。


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