第147回
指紋認証はなぜ当たったのか
今から5年前、
アメリカの会社からセンサー事業を買い取ったものの、
どのような事業展開が望ましいのか絵が描けずにいた私は、
何かヒントが得られたら、
と今は亡きコムデックスショーに行ってみました。
このショーは世界三大ITショーとの一つと言われていて、
コンピュータメーカーが
競って自社の最先端製品を展示していました。
その中で、ちょっとした注目を浴びていたのが、
「指紋認証」の技術でした。
銀行からおカネを引き出すだけではなく、
コンピュータで機密情報をやりとりする時代になっていましたが、
一般的なやり方は、パスワードで情報を護る、というものでした。
このパスワードが曲者で、悪者の侵入されないために、
桁数は多いほうが良いとか、
なるだけ脈絡のない組み合わせが良いとか、
いくつかのパスワードを併用した方が良い、と言われていたため、
ユーザーの方では、パスワードを憶えていられない、
でもノートにいちいち記録していたら盗まれたときどうする?
と、なかなか管理がやっかいなシロモノでした。
そこに登場したのが、
生体認証(バイオメトリクス)という技術で、
要するに、あなたの体の一部分が他の誰かと明確に違う、
ということが確認できれば、
それで区別できるよね、という考え方です。
声とか顔の輪郭とか、目の虹彩とか、いろいろ候補がありますが、
中でも指紋は、誤認の機会を非常に低く抑えこめたので
最も有望と言われていました。
当時NECや富士通のノートパソコンにも
モジュールが実装されたモデルがありましたが、
売れ行きは・・・、でした。
あれから5年、
Lenovo社(元IBM)ThinkPadブランドの持ち運び用小型パソコンが
この指紋認証センサーモジュールを実装し、
好調な売れ行きのようです。
技術的にもデザイン的にも進歩していることはありますが、
相次ぐ顧客情報の流出等でここ最近高まった「安全」への意識が、
ユーザーへのアピールに繋がっているようですね。
技術と消費者の心理、
このあたりのマッチングをいかにうまくとるかが、
メーカーとしての使命と感じる今日この頃です。
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