第148回
技術は人のために
今、ドナルド・A・ノーマンという人の書いた、
「The Design of Everyday Things」という本を読んでいますが、
その中に、「The Paradox of Technology (技術の逆説)」
という文言が出てきます。
技術はどんどん進化していきます。
それは本来人々の生活を豊かにすることが目的だったはずですが、
それに人がついていけなくなってしまうと、
そもそも何のためのものだかわからなくなってしまいます。
例えば、あなたの家にあるテレビのリモコン。
使ったことないボタンがいっぱいありませんか?
電子レンジや洗濯機、パソコンのソフトウェア、
携帯電話の中にもありませんか?
使わないだけならまだしも、
本来やりたいな、と思っていることについて
必要な操作があまりにも複雑なため、
機器を使うこと自体イヤになってしまったら、これは問題ですね。
技術の進化によってより良くなった機能をいかに簡単に、
使う人たちに楽しんでもらえるか?
そこを埋めるのがデザインの役割です。
「あっと驚くような最先端の技術を
怖ろしく簡単な使い勝手で提供する」
これがアップル社のCEO、スティーブジョブス氏の言葉です。
同社のパソコンはもともと使いやすさでは定評がありました。
しかし、基本ソフトの標準化競争でマイクロソフト社に破れ、
同氏は一旦同社を追われました。
その後、他社で技術だけでなくビジネスを学んだのかも知れません。
彼が戻ってから、iMacと
それに付随するデジカメ画像を処理するソフトウェア(iPhoto)、
またiPodと音楽をより自由に楽しめるソフトウェア(iTune)など、
使い勝手をよりよくするための
ハード及びソフトのデザインを強化した結果
非常に元気な会社となっています。
同社が現在パソコンでの覇権を奪取しようとしているかどうかは
よくわかりません。
ただ、例えばiTuneはWindowsのパソコンでも使えますから、
使用者はハードを気にすることなく音楽を楽しめます。
メーカーとしてものを作るからには、
やはり使う人に喜んでもらってなんぼのもの、と思います。
手前の理屈にこだわらない会社は成長が許されるのかなぁ・・・、
と思っています。
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